■「人々の潜在的な不平不満のガス抜きとしての『毒舌芸』は必要とされる」
お笑いの賞レースで立て続けに“毒舌”が評価された背景には、昨今注目が高まる“人を傷つけない笑い”に対する反動もあるのだろうか? ラリー氏はこう分析する。
「お見送り芸人しんいちさんもウエストランドも、たまたまその日の出場者の中から一番ウケたから優勝しただけであり、そこに深い意味はないと思います。ただ、どんな時代にも、人々の潜在的な不平不満のガス抜きとしての『毒舌芸』は必要とされるものであり、それぞれの芸人が時代の空気に合った毒舌ネタを披露したことが優勝につながったのです」
とはいえ、ネット上で批判の声が上がってしまうのはなぜか。
「人を悪く言うネタは生理的に受け付けないと感じる人が一定の割合で存在するからです。下ネタも同じです。毒舌ネタや下ネタは最初から受け手を選ぶ芸なので、批判が出てくるのは当然です」
つまり、お笑いとして評価されるには難易度が高いということのようだ。こうした漫才と“ただの悪口”の違いについて、ラリー氏は次のように解釈する。
「私は『毒舌』と『悪口』は別物であると考えていて、ウエストランドの漫才は『毒舌漫才』だと思います。毒舌は芸ですが、悪口は芸ではありません。人を悪く言うことを面白くできているかどうかということがポイントです」
一夜にして話題をさらったウエストランド。今回の優勝によって“毒舌漫才”が隆盛していく可能性を感じるが、そうでもないという。
「ほとんど影響はないと思いますが、ウエストランドの井口さん自身が、バラエティ番組などでも毒舌芸を期待されて、それに応えるためにあちこちに噛みつく、ということは考えられます」
来年はどんなコンビが優勝を勝ち取るのか、いっそう関心が高まりそうだ。