91年、『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系) 画像を見る

住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、欠かさず見ていたドラマの話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’90年代”を振り返ってみましょう――。

 

「『101回目のプロポーズ』(’91年・フジテレビ系)はバブル期のフジテレビ“月9”で放送されていたため、トレンディドラマとして語られることが多いですが、かなり異色の作品といえます。トレンディドラマの定番といえば、その源流ともいえる『抱きしめたい!』(’88年・フジテレビ系)のように、都会的でおしゃれな生活を送る美男美女の華やかな恋愛模様が大半。さえない中年を演じた武田鉄矢さんの起用には、誰もが驚いたのではないでしょうか。当時フジテレビ局員だった私の父も、放送前は局内で視聴率を心配する声が上がったと言っていました」

 

そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(55)。

 

ドラマは、99回もお見合いで断られ続けたモテない男(武田)が、浅野温子演じるヒロインに猛アタックしていく展開。

 

「ダブル浅野として人気絶頂だった浅野温子さんを、武田さんがどのように振り向かせるのか、その恋の行方に注目が集まりました。今でも語り継がれる第6話の、『僕は死にましぇ~ん』と叫びながら、走ってくるトラックの前に立ちはだかるシーン。これが大きな話題となり、そこからドラマを見始めた人も多かったようです」

 

■女性の社会進出が生んだ“逆格差”ドラマ

 

純粋に思いを伝える武田の姿勢が視聴者の共感を呼び、平均視聴率が20%を超える人気ドラマに。

 

「当時、3高(高学歴・高身長・高収入)がモテる男性の条件でしたが、武田さん演じる主人公は、建設会社の万年係長。さらに、その会社を辞めたあとは、3K(きつい・汚ない・危険)と言われた工事現場で働き始めました。こうした設定が、高嶺の花である浅野さんとの格差をより浮き彫りに。’80年代にも格差恋愛を描く作品はありましたが、男性側がお金持ちという設定が多かったように思います。ドラマで“逆格差”が描かれたのも、女性の社会進出が徐々に進んでいった時代背景があるためでしょう」

 

そして最終回、武田が結婚指輪がわりに工事現場にあるナットを浅野の指にはめてプロポーズ、見事に恋が成就するのだった。

 

「3高とは対極にある主人公でしたが、純粋な愛を伝え続けることで、最終的にはヒロインを射止める。“男は見てくれや収入よりも、心が大事なんだ”と、くじけずに、何度も求愛した武田さんの姿に心を打たれましたが……。今のZ世代には『女性が断っているのに追い回すなんて、ストーカーっぽくて怖い』とも映るよう。恋愛のあり方も、時代とともに、ずいぶんと様変わりするなと痛感します」

 

【PROFILE】

牛窪恵

’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍

マーケティングライター、世代・トレンド評論家

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