■元祖VTuberに元祖AKB!地下アイドルも冬の時代生まれ
その中で生まれたのが、芳賀ゆいだ。斉藤氏は「もともとは未確認アイドルと言われており、恋愛シュミレーションゲーム『ときめきメモリアル』の藤崎詩織や、ボーカロイドの初音ミクがアイドル的人気を誇ると、そのたびに芳賀ゆいは“元祖ヴァーチャルアイドル”と言われていました。そして、今は元祖VTuber(笑)。逆に言えば、それだけ実体のない“中の人”が出ないアイドルというのは先進性があったということでしょうね」と話す。
「伊集院さんのANNのリスナーには『芳賀ゆい像を作り上げることに参加する』という、一種の文化祭のような楽しさがあったのだと思います。芳賀ゆいの握手会には2000人が集まったそうで、そこにはアイドルっぽい子と普通っぽい子、そして外国人の子という3人の芳賀ゆいがいて、ファンは“自分にとっての芳賀ゆい”と握手したといいます。芳賀ゆいを演じた女性は、全部で57人いたと聞いていますね」
アイドルの歴史を変えた存在として、決して外せないのがAKB48。実は、冬の時代に“元祖AKB48”ともいえる2つのアイドルグループが存在した。それは篠原涼子(49)が所属していた東京パフォーマンスドールと、制服向上委員会。
「東京パフォーマンスドールは、原宿RUIDOで『ダンスサミット』というMCなしのライブを毎週行っていました。AKB48のように握手会などの接触イベントをしていたわけではありませんが、アイドルは遠い存在という認識のなか“毎週会いに行ける”というのは画期的な試みでした。
またAKB48には個別写メ会という、ツーショットで写真を撮るイベントがありましたが、その走りは冬の時代に生まれた制服向上委員会だと思われます。制服向上委員会はお客とアイドルが間近に接触して、ツーショットでポラロイド写真を撮るという商法が注目を集めました。ある意味、東京パフォーマンスドールと制服向上委員会の先にAKB48がいると言えるかもしれません」
さらに斉藤氏は「地下アイドルという言葉が生まれたのも冬の時代。メジャーでないアイドルの定番のライブ会場が当時、東京の四谷にあり、それが本当に地下にあったためです。また当時、歌って踊るアイドル以外に若い女の子を売り出す方法として盛んになったのがグラビアアイドルで、雛形あきこさん(45)を筆頭にグラマラスな若い女性が雑誌の表紙を飾るようになりました」とも述べた。
隆盛を極める“現代アイドル”の萌芽は、冬の時代に育まれていたようだ。