住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう!わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、歌って踊った音楽の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’90年代”を振り返ってみましょうーー。
「’80年代後半から’90年代前半に巻き起こったバンドブームが一段落したころ、小室哲哉さんはTM NETWORK(のちにTMN)の“プロジェクト終了”(’94年)を宣言。プロデュース業へ比重を移し “小室ファミリー”の快進撃が始まりました」
こう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(55)。
その先駆けとなったのがtrf(のちにTRF)。『EZ DO DANCE』『寒い夜だから…』(ともに’93年)『CRAZY GONNA CRAZY』(’95年)とヒット曲を連発した。
「それまでのバンドでは見られなかったDJやダンサーが目を引く新しいユニット。ダンサブルでノリのいい曲なので、ディスコに行けない女子中高生でも、カラオケボックスで盛り上がれました。日本でなじみの薄かったダンスミュージックやR&Bを持ち込み、シンセサイザーなどの電子機器を多用した音楽は、小室サウンドとして親しまれることになります」
■さまざまなムーブメントを生み出した小室ファミリー
他分野のタレントとのコラボを、次々と成功させた功績も大きい。
「篠原涼子さんの『恋しさと せつなさと 心強さと』(’94年)は、昨年の紅白歌合戦でも披露されるほど、多くの人の心に刻まれている名曲。浜田雅功さんとのユニット・H Jungle with tの『WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント』(’95年)は200万枚を超えるヒット曲に」
また、小室ファミリーそれぞれの物語にも注目が集まったものだ。
「安室奈美恵さんは人気絶頂期の二十歳で結婚、出産をして驚かせました。また、アイドルとしてなかなか芽が出なかった華原朋美さんのシンデレラストーリーに、夢を抱いた人もいるでしょう」
’97年には、小室ファミリーを集合させた「TK presents こねっと」を結成し、インターネットを普及させる活動も始めた。
「CDの売り上げが右肩上がりを続けていた時代、エイベックスの売り上げの7割を占め、小室ファミリーからさまざまなムーブメントが生み出されました」
ただ、ブームは長く続かない。エイベックスと小室の関係が悪化した’97年後半になると急激に人気が失速。そして宇多田ヒカルの出現が決定打になった。
「小室さんご自身も『ヒカルちゃんが僕を終わらせた』と語っています。とはいえ、’90年代に小室さんの革新的な音楽が登場しなかったら、現在のJ-POPシーンはずいぶん違ったものになったのではないでしょうか」
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍