1995年公開『ショーシャンクの空に』(写真:アフロ) 画像を見る

住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、人生を変えてくれた映画の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’90年代”を振り返ってみましょうーー。

 

「『ショーシャンクの空に』(’95年)は、いまだに『泣ける映画』や『好きな映画』のランキング調査で上位に入るほど、人々の心に残っている名作。じつは私にとっても五指に入るほど好きな映画なんです」

 

そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(55)。

 

日本で公開されたころ、注目されていた映画は『パルプ・フィクション』(’94年)や『フォレスト・ガンプ』(’95年)で、同作の期待度はそれほど高くなかった。

 

「刑務所が舞台で、登場人物のほとんどが男性ということもあって、女性は当初、敬遠したのかもしれません。また、当時のハリウッド映画に求められていた派手なアクションがあるわけでも、人気俳優が主役を務めているわけでもありません。いまでこそ名優と名高いモーガン・フリーマンも、まだ名前が売れ始めたころでした。そのため、興行的に成功とまではいえなかったとされています」

 

■“借りて見る”時代に口コミが生んだ不朽の名作

 

ただ、口コミによって徐々に人気が出て、映画館よりもレンタルビデオで見る人が多かった。

 

「学生時代にアルバイトをしていたレンタルビデオ店の後輩から『すごい勢いでレンタルされていくので、追加発注したほどです』と聞かされた記憶があります」

 

物語は、妻とその愛人を射殺した疑いをかけられた元銀行員を中心に、刑務所での男同士の友情、そして人間ドラマが描かれている。

 

「ホラー小説で有名なスティーヴン・キングの原作なので、怖い内容だと思って見た人もいたようですが、囚人たちの心情を丁寧に描いたヒューマンドラマ。元銀行員の主人公は、囚人仲間からいじめや性暴力を受けたり、彼のスキルに目をつけた小ずるい刑務所長から不正に加担させられたりしますが、長い年月を経て、刑務所を脱獄し、所長の不正を白日のもとにさらします。弱者が勝利する爽快な結末が、不況の日本で、より人気を集めたのでしょう」

 

昨年5月には、24年ぶりに地上波の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送された。

 

「私もコロナ禍、テレビで久々に見ました。図書係になった主人公が、刑務所でオペラ『フィガロの結婚』のレコードを流し、囚人たちが感動するシーンでは、閉鎖空間で人の心を打つ芸術の力を再認識しました。日本政府はコロナ禍で芸術家をあまり救済せず、活動自粛に苦しむアーティストもいたので、より考えさせられたのです。見返すたびに、新たな発見や気づきを与えてくれるーー。そんな名作なのだと思います」

 

【PROFILE】

牛窪恵

’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍

マーケティングライター、世代・トレンド評論家

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