M-1グランプリ2023公式ホームページより 画像を見る

いよいよ12月24日に迫った日本一の漫才師を決める大会「M-1グランプリ2023」(以下、「M-1」)。2001年のスタート当初のエントリー数は1603組だったが、年を追うごとに増えていき、一旦終了する2010年には4835組に。2015年に復活してからもその勢いは止まらず、今年は昨年の7261組から約1300組も増えて8540組となり、過去最高を大幅に更新した。

 

エントリー総数が増えるに従って、漫才師たちの争いも苛烈を極めていく。決勝までに1回戦、2回戦、3回戦、準々決勝、準決勝が行われるが、なかでも最もハードルが高いとされているのが準々決勝。今年は準々決勝に進んだ123組のうち、ストレートに準決勝に進出したのはわずか30組。ふるいにかけられて約4分の3が涙をのんだ。

 

準々決勝で敗れた芸人の中には、ヨネダ2000、インディアンス、からし蓮根といった過去のファイナリストの姿もあり、競争が激化していることがうかがえる。このように求められるレベルが年々あがるなか、それでもエントリー総数はうなぎ昇りに増えており、M-1の牽引力はとどまることを知らない。その背景に何があるのか、お笑い評論家のラリー遠田氏に話を聞いた。

 

M-1のエントリー数は、マヂカルラブリーが優勝した2020年から、毎年1000組近く増え続けている。ラリー氏は「影響力が大きいからこそ、出たいと思う人が増えている」とした上で、ある即席ユニットの飛躍をあげる。

 

「2020年にピン芸人同士の即席ユニットである『おいでやすこが』が準優勝して、それがきっかけでおいでやす小田さんと、こがけんさんという2人のピン芸人がブレイクしました。これがきっかけになって、M-1のために即席ユニットを組んで漫才をやる芸人が増えたのではないでしょうか。

 

また、昔は“漫才は漫才師、コントはコント師”というふうに専門分野が分かれていることが多かったのですが、最近はロングコートダディや男性ブランコなど、どちらかというとコントをメインにやっていた芸人もM-1のために漫才をやるようになっています。その中には決勝に行くような人も出てきていて、出場者の層が厚くなっています」

 

2006年に女性2人組のアマチュア漫才師「変ホ長調」が決勝に進出したが、今年も東大生と早大生によるコンビ「ナユタ」が準々決勝で大きな注目を集めるなど、アマチュア漫才師が台頭している。

 

「おそらくM-1ではアマチュアの参加者もものすごく増えているはずです。ラランドは、ツッコミのニシダさんが大学生だったときに準決勝まで進出して大きな話題になりました。最近では大学のお笑いサークル同士の対抗戦や大学生のお笑いコンテストがあって、“学生芸人”の世界が盛り上がっています。私も大学生のお笑いコンテストに審査員として招かれたこともありますが、今の学生芸人は本当にレベルが高いです。会社に就職していて、平日は普通に仕事をして、土日祝日はお笑いライブに出る、という“社会人芸人”も多いですね」

 

学生芸人のレベルが上がる背景にはテクノロジーの進化も影響しているようだ。

 

「昔は情報がないのでお笑いを学ぶこともなかなかできなかったのですが、今はYouTubeなどでネタ動画やネタの作り方はいくらでも学べるようになりました。そうやって学んだ上で人前でネタをやってコツをつかんでいけば、だんだん上手くなっていくんです」

 

アマチュアからプロまであらゆる芸人がこぞって参加するなど、空前の“漫才ブーム”ともいえる昨今のお笑い界。しかし、ツービートや島田紳助・松本竜介らが活躍した1980年代前半の漫才ブームが終了して以降、漫才にとっては冬の時代が続いた。ブームは終わるのが常ではあるが、ラリー氏はM-1を中心とする今の漫才ブームは「今のところ終わる理由がない」という。

 

「M-1が漫才の世界を盛り上げているという側面はあるので、M-1が終わったらブームは一段落するかもしれません。しかし、今のところ終わらせる理由がないですよね。視聴率は取れているし、世間の注目度も高いし、M-1のおかげで芸人が育っていくという面もある。

 

ザ・ドリフターズ、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるずなど、かつて一時代を築いた芸人たちは、みんなテレビでコント番組をやっていました。漫才は2人の芸人が舞台に立ってしゃべるだけという地味な芸なので、本来はテレビにあまり向いてなかったのです。

 

だから、M-1が始まった2001年の時点では、漫才は時代に取り残されて忘れられた文化でした。M-1ができたことで、そこから新しい漫才の歴史が始まったんです」

 

エントリー総数は増えても、王者に輝くのは1年に1組だけ。最後にラリー氏は言う。

 

「裾野が広がっていますが、決勝には毎年10組しか行けないですし、競争は激しくなるばかりですよね。結果的に、漫才がどんどん発展していく時代になっていると思います」

 

果たして、8540分の1の座を掴み取る漫才師は――。

出典元:

WEB女性自身

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