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「リリースから50年以上が経過した曲も、初めてデジタル配信されたことで最新の音楽チャートを席巻中です。ちあきなおみさんという歌姫の存在感を改めて示す形になっています」(音楽関係者)

 

デビュー55周年を迎えた先月、全シングル&全オリジナルアルバムの300曲以上を自身初のデジタル配信でリリースした歌手・ちあきなおみ(76)。69年に「雨に濡れた慕情」で歌手デビューして以降、彼女が在籍したレコードメーカー3社(コロムビア・ビクター・テイチク)から配信が一斉にスタートし、話題を呼んでいる。「喝采」「星影の小径」「黄昏のビギン」など数々のヒット曲で一世を風靡したちあきだが、92年に表舞台から忽然と姿を消した。

 

「当時、夫である郷鍈治さんが肺がんのため亡くなったことが影響したと報じられました。もともと俳優だった郷さんでしたが、78年にちあきさんと結婚した後は、マネージャーとして彼女を支えており、公私にわたるパートナーだったのです。引退こそ明言していませんが、その後、ちあきさんがマイクを握ることはありませんでした」(前出・音楽関係者)

 

こうした経緯から、ちあきは“伝説の歌姫”と称されることも少なくない。活動休止後も、ベスト盤のリリースやテレビで特集番組が放送されるたびに話題となるなど根強い人気を誇っており、今年3月にはコンセプトアルバム「銀嶺」をリリースし、ファンを喜ばせた。冒頭のデジタル配信についても、従来からのファンに加え、若い世代からも注目を集め、レコチョクやiTunesのランキングで、それぞれ「喝采」が見事1位に輝いている。

 

今回のデジタル配信に尽力したのが、長きにわたってちあきのプロデューサーを務めた、元テイチクレコード社長の東元晃さん。現在も直接コンタクトを取っている、ちあきにとっての恩人だ。東元さんは、彼女の最近の様子について次のように話す。

 

「おとといも電話で話しましたが、元気にしていますよ。月に数回連絡を取っていますが、毎回他愛ない話題が多いかな。大谷選手がまたホームランを打ったとか、また急に暑くなったね、といった世間話ですね。最近は昭和のヒット曲を若い世代がカラオケで歌うのが流行っている、という話をしたこともありました」

 

最新の音楽配信サービスについて話題がおよぶなか、「ファンの方々が望んでくださるなら」という本人の同意も得られ、節目のタイミングでのデジタル配信に踏み切ったという。

 

「チャートの1位になったことを報告したときは『まぁ、すごい。よかった!』と、とても喜んでいました。歌手・ちあきなおみは、徹底した完璧主義。かつてレコーディングをしていたとき、彼女は納得できないとどれだけ時間がかかってもやり直していましたから、どの曲にも強い思い入れがあるんですよ。それが令和でも受け入れられたというのはうれしかったんでしょうね」(東元さん、以下同)

 

東元さんも、さまざまな反響に驚いているそうだ。

 

「曲が誕生してから半世紀以上たっても、ちあきなおみの歌が注目されるというのはありがたいですよね。NHKの大河ドラマ『光る君へ』の題字を担当している書家の根本知さんは、ちあきの歌を聴きながら字を書くのだそうです。ちあきの歌声を聴くことで、書の繊細な表現につながるとおっしゃっているとか。若い書家さんですが、世代を超えて歌から感じ取るものがあるのかも知れません」

 

SNS上でも、ちあきの歌を初めて聞いたという人たちから、

 

《ちあきなおみと同じ時代、同じ時間を過ごしてみたかった》
《初聴きなんだけど衝撃》

 

といった反応が寄せられている。

 

いまなお、多くの人の感情を揺さぶるちあきの歌。今年9月に喜寿を迎える“伝説の歌姫”がもう一度マイクを握る姿を見たいという声は多い。

 

「郷さんとのお別れをきっかけに芸能界を離れた彼女ですが、長い年月を経て、その思いにも少しずつ整理がついてきたのではないでしょうか。世間とのかかわりをシャットアウトしているということもけっしてないですし、タイミングさえ合えば、歌う可能性は十分にあると思います。本人は今も歌うことが好きで、日本の昔の歌やシャンソンからファド(ポルトガルの大衆歌謡)までさまざまなジャンルを聴いているようです。歌に対する関心は昔と変わっていません。彼女自身が心から納得のいく曲と出合うことができれば、新曲を歌うこともあるでしょう」

 

全盛期のちあきなおみを知るプロデューサーの頭の中には、その復活のステージの構想も浮かんでいるようだ。

 

「彼女はコンサート会場の音響にも細部までとことんこだわる人。それに、すべてのお客さんにきちんと声を届けるという意味で、あまり大きな会場ではなく小規模なステージを選ぶと思います。私が、誰よりももう一度彼女に歌ってほしいと思っていますよ」

 

喜寿となったちあきが選んだ会場で、32年ぶりに「喝采」が起こる日は、そう遠くないのかもしれない――。

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