声優・大山のぶ代さんが9月29日に、老衰のため亡くなっていたことが分かった。90歳だった。名作アニメを支えたレジェンドがまた一人逝ってしまい、偲ぶ声が広がっている。
10月11日に所属事務所「アクターズ・セブン」が発表し、葬儀は親族のみで行われたという。また報道によれば、大山さんは9月29日の昼頃に容体が急変。今年に入って、入退院を繰り返していたとのこと。
国民的アニメ『ドラえもん』のドラえもん役を’79年から’05年まで約26年間にわたって務め、その個性的な声は唯一無二として愛されてきた大山さん。
いっぽう’12年に認知症を発症し、長く闘病生活を送っていた。当初、俳優で夫の砂川啓介さん(享年80)が都内の自宅で介護をしていたが、’16年4月に砂川さんの尿管がんが発覚。夫妻が“共倒れ”になる最悪の事態を想定し、やむなく愛妻を老人ホームに入居させることになった。
大山さんが老人ホームに入居した当時、砂川さんは本誌にこう語っていた。
「彼女を老人ホームに入れて1カ月。僕が会いに行くと、顔を見た瞬間、彼女はね、泣き出して、両手を出してくるんですよ。だからね、嫌なのを我慢してるのかな、可哀想だなって思ってたんだけどね……」
だが、その心配はすぐに払拭されたそうで、砂川さんは「マネージャーに見に行ってもらったんですよ。そうしたら意外や意外、水が合ったのか、彼女は怒ったりすることもなく、元気でやっているというんです。フラワーアレンジメントやちぎり絵、音楽療法でみんな一緒に歌ったりと、いろんなレクリエーションがあって、それを喜んでやっていると聞いてホッとしました」と安堵していた。
ところが、誰よりも大山さんのことを第一に考えていた砂川さんが、’17年7月にこの世を去ってしまう——。砂川さんが亡くなった当時、大山さんの知人は本誌にこう明かしていた。
「のぶ代さんは斎場で砂川さんの遺体と対面したとき、泣きながらすぐに帰ってしまったそうです。心身ともに難しいという周囲の判断から、お葬式にも出られませんでした。“夫が亡くなった”ということすら、彼女がどれだけ理解できているのか……」
砂川さんが天国に旅立ってからは、大山さんの身の回りの世話をしていたのは夫妻のマネージャーを約30年間務めた女性だった。砂川さんは亡くなる直前に、この女性に「すまない、頼むよ」と大山さんのことを託したという。
そうした周囲の支えもあり、大山さんは老人ホームでは元気に過ごしていたそうだ。砂川さんが亡くなって3カ月たった頃の様子について、前出の知人はこう明かしていた。
「ホームではちぎり絵教室や合唱の時間があるのですが、のぶ代さんは仲のよい友人たちと一緒に楽しく取り組んでいるそうです。彼女は“姉御肌”ですから、あれやこれやとみんなを仕切ってあげるのが上手。いわばリーダー的存在で、いまでは“ホームのジャイアン”になっています(笑)」
明るく過ごしていたとはいえ、“最愛の夫”に思いを馳せることもあったようだ。
「のぶ代さんは10月16日生まれ。ちょうど1年前の誕生日(16年)に、砂川さんは彼女が大好きな花束とホームで着る用のパジャマをプレゼントしてあげたんです。季節に合わせて、可愛い柄物のパジャマを3着。すでにゴムが伸びてほころびも出てきたのですが、のぶ代さんはいまでもそのパジャマを毎日着続けているそうです」(前出・知人)
天国で愛妻を見守り続けてきた夫と、いまごろ再会しているだろうか——。