■棒に振ってしまった「最後のチャンス」
また、調査を行うのは、独立性の高い日本弁護士連合会のガイドラインにもとづく第三者委員会ではなく、外部の第三者を入れた調査委員会であることも、不信感を招きかねないと指摘する。
「実はここが今回の唯一にして最大の”逃げ道”かなと思ったんですよ。何もソリューションが提示されてない中で唯一の具体策として、自分たちだけで”なかったことにはしません”と、”第三者委員会やりますよ”と言っているのだから、もっとその重要性や意義を強調すればいいのに、なぜか歯切れが悪い。
やはり、フジ主催ではなく、例えば弁護士会に頼んで公正に調査してもらうなどと説得力のある方法でやればいいのに、あえてそれをしないから本当に公平な独立性のある調査ができるのかっていう見方をされてしまうわけですよね。そういう説得力のあるソリューションを提示できなかったから、せっかく作るのに調査委員会が評価もされないし、調査結果もインチキ臭く見えちゃいますよね。最後のチャンスがここだったのに、それを棒に振っちゃったなという気がします」
今後、フジテレビができることは何があるのだろうか。
「港社長というより、経営陣そのものの感覚がまだ古かったのだと思います。経営責任がここまで広がることを想像できず対策を取ってなかったことが問題なので、社長含めて”経営陣総取っかえ”に近いことが起きない限り、収まりがつかないと思います。
テレビ局は何よりもスポンサーを気にするわけで、スポンサーが実際に手を引いちゃったわけです。 ここまでいったらもう他に打つ手がないので、こうなる前にやっときゃいいのにというところはありますね。少なくとも問題発覚から1年半放置してきた”感覚の鈍さ”が問題ですよね」
一方で、港社長に同情できる部分もあるという。
「ここまでは全面的にフジテレビを批判しましたが、ちょっとだけ港社長の肩を持ちたいというか、立場を代弁してあげたいなと思ったのが、あの方は元々制作畑出身で、番組ディレクターやプロデューサーをやってましたよね。だから演者の方との距離が近いと思うし、良くも悪くも”身内的な感覚”があったと思います。
つまり、もっとプロの経営者だったら、初期の段階で中居さんをバサッと切れたと思うんです。別に他の人でも視聴率は取れるし金も稼げる。代わりの効く中居さんを切っても従業員を守るみたいなことがもっと早くから割り切れるのかなとも思うんですよ。ちょっとその辺はかわいそうかなと思います」
とはいえ、実際問題としてどのようにスポンサーを納得させていけばよいのだろうか。
「納得させるには、経営責任を取らないといけませんので、 まず現執行部、社長、取締役の総退陣と、私は多分”相談役”まで行くと思います。そこまでしないと、業界の人たちはともかくとして、海外のアクティビストや株主は納得しないのではないでしょうか。
関与が指摘された幹部社員と社長だけしっぽ切りするようなお手盛りの調査報告じゃなく、フジテレビが”今1番やりたくないこと”ができたら、もしかするとそれが次の最後のチャンスになるかもしれません。”謝罪は負け戦”って言ってますけど、早くからちゃんと割り切れる人が結局ダメージを減らせるわけで、やっぱり”背に腹は変えられない”んですよね」
フジに残された道は険しいものになりそうだーー。
