「やっぱりもうこんなにモヤモヤさせてくれる朝ドラは近代稀だなっていう感じで見てます」
NHK連続テレビ小説『おむすび』についてこう指摘するのはTVコラムニストの桧山珠美さん。
『おむすび』は、橋本環奈(26)演じる平成元年生まれのヒロイン・結が栄養士として人生を切り開いていく物語。3月28日で最終回を迎える本作だが、当初から脚本や演出に“不自然”といった感想が相次いでいる。
「これまでも朝ドラには、最初は面白そうなんだけど“裏切られた”経験はいっぱいあります。朝ドラワーストにあげられがちな『ちむどんどん』や『純と愛』も酷かった(笑)。松島菜々子が弁護士をやった『ひまわり』も“そんな簡単に弁護士になれるんだったら私なろうかな”って思った記憶があります。だからそれなりに期待を裏切られることはあるんですが、『おむすび』ほど毎回“裏切られる”体験がすごいっていうのは過去に経験してないので、もしかしてワースト1かもしれないですね」
そんなふうに『おむすび』を厳しくジャッジする桧山さんだが、『おむすび』にも2つの功績があるという。1つ目は主題歌『イルミネーション』を書き下ろしたB’zを2024年末の『NHK紅白歌合戦』に出演させたことだ。
「紅白を何回も蹴っていたと言われているB’zが紅白に出たっていう、これは最大の功績だと思うんですよね。しかも、主題歌だけでなく『ultra soul』などB’z本来の持ち味を最大限に見せつけてくれました。だから、番外編ではあるけど、B’zの紅白出場が『おむすび』の最大の功績です」
1つ目は何とも辛口の“功績”だが、2つ目の功績は未曾有の災害をテーマに扱った『おむすび』にふさわしい。
「避難所での“おむすび”のエピソードのおばさんと、中華料理店のおじさんがいたじゃないですか。あの人たちは元々、神戸で阪神淡路大震災のことで活動してこられた人たちなんです」
被災した結におむすびを手渡した女優は安藤千代子(67)。神戸出身で実際に震災を経験し、現在は語り部としても活動しているという。
また、中華料理店の店主役を演じたのは俳優の堀内正美(75)。 震災後に神戸市民の合言葉「がんばろう!!神戸」を提唱し、市民ボランティア団体「がんばろう!!神戸」を結成するなど、神戸の復興に貢献した人物だ。
「震災と向き合って、語り継いだり復興に携わってきた実際の人たちを出演させたことは、大きな意味があると思います」
制作陣は、震災を描くにあたって多くの取材を重ねたという。そんな『おむすび』だからこそ実現したキャスティングかもしれない。
“モヤモヤ”だらけの『おむすび』ではあったが、インタビューなどを通して語られる制作陣の思いには熱いものがあった。せめてその“想いの種”だけは、どこかで誰かの心に芽を出してくれることを願いたい。
