■「この周辺に“楳図かずお美術館”を建てたい」
財団を作った楳図さんは、数々の思い出が詰まった吉祥寺という地を舞台に“ある構想”を練っていたという。
「楳図さんは‘22年に『ZOKU SHINGO』という連作絵画作品で画業に復帰したこともあり、自らのことを“芸術家”でもあると考えていました。『この周辺に“楳図かずお美術館”を建てたい』という構想も描いていましたね。
現在、ヨーロッパやアジアを中心に海外での翻訳出版も増えていることから、楳図作品は世界的にも注目されているようです。昨年にイタリアのルッカで開催された欧州最大級のコミックフェスティバル《ルッカコミックス&ゲームズ》で、『漂流教室』が《最優秀出版企画賞》を受賞するなど、日本だけでなく海外からも楳図さんへの関心は年々高まっています。
楳図さんの構想に基づき、国内外に開かれた美術館をこの周辺に建てたいと考えています。財団のスローガンである『FROM “KICHIJOJI” TO THE WORLD(“吉祥寺”から世界へ)』には、楳図さんの愛した吉祥寺という地をベースにして、楳図かずおの作品を世界に発信していくという意志が込められているのです」
また楳図さんの死後、ファンから『UMEZZ HOUSEを公開してほしい』という声も多く届いているという。
「海外の方から《UMEZZ HOUSEのなかを見たい》というメールが届くほど、一般公開を望む声は多くあるようです。楳図さんもこの家を自分の作品のひとつと考えていたので、財団としても、ぜひ後世に残し、広く皆さんに見てもらえるようになればという思いはあります。ですが、周囲が住宅街なので、この場所ではなかなか難しいとも考えています。
今では、将来的にUMEZZ HOUSEを移築できたらいいな、と考えています。移築と合わせ、展示室も増築し、それを『楳図かずお美術館』というかたちで一般公開できると良いですよね」
‘26年は楳図さんの生誕90周年にあたるが、これを期に直近のイベントも多く控えているようだ。
「楳図さんの命日である10月28日に《楳図かずお生誕90周年プロジェクト》の発表があります。楳図さんの最期の新作である『ZOKU SHINGO』の書籍化や、『漂流教室』など過去作品をB5版の雑誌サイズでシリーズ出版する《UMEZZ AUTHENTIC COLLECTION》ほか、多数の企画が進行中です。
来年の1月にはフランスのアングレーム市立美術館で、楳図さんの回顧展も開催されます。今年5月に吉祥寺で『UMEZZ GUWASHI CARNIVAL』というイベントを行ったのですが、来年も同じ時期によりパワーアップさせて開催します。ぜひ、楽しみにしていてください」
楳図さんの思いはこれからも受け継がれていく――。
画像ページ >【写真あり】“まことちゃんハウス”の個性的すぎる内装の数々(他9枚)
