■3DCGによる迫力の画、怒涛のテンポで示される復讐の発端…評価できるポイントも
とはいえ、『果てしなきスカーレット』には評価できる面もあるという。
「単独で手がける脚本が批判されがちな細田監督ですが、やはりアニメの演出力は今回も冴え渡っていますし、前作『竜とそばかすの姫』から2倍の期間がかけられたという3DCGによる迫力の画は『スクリーンで本当に観て良かった』と思えるものでした。
特に冒頭部は、怒涛のテンポで示される復讐の発端、主人公のスカーレットが苦しみながら死者の国を闊歩する画、実写映画『ベイビーわるきゅーれ』のチームが手がけたアクロバティックなアクションなど、“大胆な省略も活かされた”“ダークな作風だからこそ”の魅力が短い時間にギュッと詰まっていました。
豪華キャスト陣の演技もおおむね高評価です。主演の芦田愛菜さんは予告編では役柄とのミスマッチが指摘されており、本編でも違和感を覚え続けてしまう方もいるでしょうが、演技そのものは“激情に身を任せてしまう王女”を見事に表現していました。
何より、世界で凄惨な戦争が起こった今の時代に『復讐』というテーマを描き、そして『何ができるのか』の問いの答えを見つけようとした姿勢は、心から称賛したいです。その上で、結末がやや表面的かつ都合が良いものに見えてしまうのは残念ではありますが、その意志と意義を“買う”人もまた多いはずです」
そんな本作には、テレビ局も宣伝に力を入れている。『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では、11月に入ってから4週にわたって細田氏の過去作を放送。『時をかける少女』が放送された28日には、番組後半で『果てしなきスカーレット』本編映像の冒頭部分がオンエアされた。まだ上映スタートしたばかりの本作だが、今後、興行収入で巻き返すことは可能だろうか?
「公開初週から苦戦したとはいえ、映画ランキングでは3位にランクインしていましたが、2週目では10位圏外でした。上映回数の激減と、否寄りの賛否両論の評価がさらに興行的な“悪循環”につながっていますし、今後に大きく巻き返すことはまずないでしょう。
また、28日の『金曜ロードショー』で冒頭7分8秒の本編映像が放映されましたが、前述した圧巻の冒頭部が『盛り上がる前に終わってしまった』ため、むしろ暗くて重そうな作品のイメージを強固にしてしまったのかもしれません。そもそも『金曜ロードショー』で4週連続細田守監督作品が放送されたことも、今回の『果てしなきスカーレット』との作風のギャップを感じさせてしまう原因になっていたのではないでしょうか。
一方で、本作が配信されれば大きくハネる可能性は高いです。今はSNSやYouTubeの動画での酷評が盛り上がってしまっているので、“わざわざ劇場に足を運んでお金を払って観たくない”心理が大いに働いているでしょうが、見放題の配信であればハードルは低く、ある種の“怖いもの見たさ”で選ぶ人も多いと思うのです。また、細田監督という個人の思想が“これでもか”と注ぎ込まれた、歪(いびつ)な印象でさえも本作の魅力と言えるため、カルト的な作品として語られ続ける可能性も大いにあるでしょう」
賛否を巻き起こした現象は、細田氏の作品の注目度が高いことを表しているのだろう。
画像ページ >【写真あり】復讐に燃える王女・スカーレットの声優を務めた芦田愛菜(他1枚)
