■18歳の若者が沖縄で教えられたこと
ネルソンさんは貧困と人種差別の中で育ち、18歳で海兵隊に志願。沖縄で訓練を受け、ベトナムに送られ、従軍した。映画では、若者が人を殺せるように変えられていく過程も描かれている。
「人を殺すというのは自然なことではないですからね。だから、人を殺せるようになる過程で、非常に暴力的な“洗脳”が行われる。
入隊した若者の自尊心を徹底的に痛めつけ、相手の国の人間を『人間以下』だと思わせる。そうやって、だんだん人を殺せるように訓練していくんです」
当時、アメリカの統治下にあった沖縄も、その訓練の場だった。
「沖縄で若い米兵たちは、東洋人は人間以下なんだと教えられた。だから、沖縄でも暴力的な行動をしてしまう。そういうことが当時もあったし、今も結局、変わっていないのではないでしょうか」
■戦争を始める人たちは、戦場には行かない
ベトナムの戦場で、ネルソンさんは一人の農民兵士から、こう問いかけられる。
「私たちは自由のために戦っている。なのに、なぜあなたは他の国に来て我々を殺すのだ。アメリカで戦え、真の自由のために」
実際にネルソンさんが戦場で経験した出来事で、塚本監督が「絶対に描かなければ」と考えた場面だ。
「戦争を始めるのは、それぞれの国で力を持っている人たちです。でも、その人たちは戦場には行かない。実際に行くのは、僕ら民衆です。そして、戦争さえなければ、本当は友達になれるような人たちが殺し合う。
上の人たちが決めたことによって、友達になれる者同士が殺し合わなければいけなくなる。アレンさんも、戦争さえなければ、あのベトナムの人と友達になれたかもしれないんです」
監督は、こうした問題が日本にとっても決して無縁ではないと考えている。2015年の安全保障関連法成立によって、日本は一定の条件のもとで集団的自衛権を行使できるようになった。
「日本を守るためではなく、他の国の何かのために別の国へ行って、人を殺さなければいけない。そうなったとき、日本の人たちもアレンさんと同じような疑問を抱く可能性があると思うんです」
災害救助で人命を守る自衛隊員が、戦争では人を殺す立場になる。その矛盾を監督は懸念する。
「人を助けるために自衛隊に入った人もいるはずです。でも、戦争に行くことになれば、目的が真逆になる。辞める人が増えれば、人員が足りなくなるでしょう。そうなると、アレンさんのように経済的に厳しい家庭の若者が最前線に送られる可能性もある。それでも足りなければ、徴兵制ということも、ゆくゆくは考えられると思うんです」
憲法9条についても、監督は「変える必要はない」と考えている。
「9条を変えなくても、日本は十分に軍備を持っています。それでも変えたいのは、9条に書かれた“理念”を変えたいということではないでしょうか。理念を変えてしまうと、これまでのように『ここまではできる』『いやできない』という、せめぎ合いの議論すらできなくなる。一方向に進むしかなくなってしまう。それを危惧しています」
