[E:note]これまでに成底さんの歌にいちばん影響を与えた人はどなたですか?
成底 私が個人的にいちばん影響を受けたのは、少年少女合唱団の先生だったシスターですね。声の出し方など技術的なことも含め、その先生からはいろいろな影響を受けました。子供たちの意見を聞いて指導していく方で、私がいちばんのびのびとできたのもそのころ。声楽は習っていないのに、ハイツェー(いちばん高いド(ツェー)の音)が出せたのはその先生の指導のおかげです。高校の時に音楽コンクールの声楽部門に出て歌うと、「なんで、声楽を習っていなくてハイツェーが出るのですか?」と言われましたけど、ふつうにのびのび歌っているのですよね。楽しく歌っていて、技術とかまったく意識していない。それなのにその声が出せたのはシスターのおかげだと思っています。今でも、そのときの声というのを探りますね。
[E:note]アーティストではどなたかいますか?
成底 エルトン・ジョンさんは、自分でピアノを弾きながら歌うということでは、やっぱりすごい方だなあと感じますね。あとは、アンジェラ・アキさんや、夏川りみさん、BEGINさん、あとは最近のことでいうと、アルベルト城間さんと共演するという夢が叶ったのはうれしかったですね。私が中学のころなど、ステージで見ていて、あの太陽のような声にすごく触発されて、私もこういうふうに歌いたいと思っていたのです。
[E:note]成底さんにとって歌とは何でしょうか。
成底 好きなのはもちろんですけど、歌を仕事にしている今は、「歌は成底ゆう子を人として成長させるもの」だと思います。自分の持っているものの良さ、みたいなものは、客観的に見てくれている意見で初めて知ることで自分ではわからないんですよ。だから、自分のやりたいことや好きなことが絶対に当たっているとは言えない。成底ゆう子を活かすための楽曲ということを考え、歌うものにあるテーマ性を持たせたり、沖縄出身者であることを意識した曲作りをしたりもします。それが正しいのか、みなさんに喜んでいただけるのか、不安なこともありますし、すごく落ち込んだりもするのですよ。
[E:note]そういうふうに考えるようになったのは、歌を仕事にしてからですか?
成底 そうですね。でも、曲を作ってCDを出させていただいて、感動して聴いて下さるみなさまがいたときに、その迷いが全部吹っ飛ぶんですよ。ああ、よかったなぁ、信じて良かったなぁ、諦めなくて良かったなぁ、って。本当に応援して下さる方、聞いて下さる方の一人一人のおかげだと感謝していますね。だから、人として成長させてくれるものだと思います。
[E:note]これまでの自分の作品が1枚のアルバムとして世に出て、ライブでお披露目したときの心境は?
成底 あの~複雑でしたね(笑)。このアルバムは本当に時間をかけて作らせていただいたので、本当に納得して出したものなのですね。だからこそ、出したときの達成感や期待と、これから先を決める1枚というだという不安が入り混じっている、そういう感じでしたね。今でもそうです。
0401_2 [E:note]好きなものを仕事にするのは幸せでもあり辛い部分もありますね。
成底 好きだからいろんなものを吸収していかなければ上手くいかないこともあるでしょう。それをどこまで認められるとか、どこまで教養を広げられるかということが一番だと思います。どうしても自分の我が出てしまうので、そことの戦いなのですよね。自分の我とみんなの意見と時代の流れと、どれだけ自分が受け入れられるのか。だから、曲を作っているときがいちばんつらいですね。
[E:note]詩を読むと、成底さんの経験や思いが綴られているような気がしますが。
成底 ベースは経験になりますけど、経験となると、自分の我も主観的な言葉になっちゃうのですよ。でも聴いてくれる人は私の主観なんていらない、自分の共感できるものがほしいわけなのですよ。そこから客観的な物の見方や言葉、そして客観的なシーンに置きかえなければいけないと思うのです。私は石垣島で育ったから、ヤシの木や島バナナのある環境が自然なのですけど、それは私の世界でしかないから、島バナナを柿にしようか?とか(笑)、いろいろと考えるわけですよ。そこから変えていく言葉の中には自分が経験したことのない言葉も出てきますし、こんな言葉、私は言わないなぁ、なんて思うこともあります。作詞をするときは、そういうところで闘うわけですけど、けっこう主観が出ちゃうので、できるだけ客観的にというのを意識していますね。
(続きは次回へ)

撮影/徐 美姫

[E:note]成底ゆう子オフィシャルHP
http://www.dictorland.com/narisoko/

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