~阿部寛さんとは自然に親子役を演じられました~

「チョコレート・ファイター」は、ヒロインは、普段はチョコレートが好きな女の子、“ゼン”。自閉症だったゼンは、やがて自分の身体能力に目覚め、人生の
危機に立つとアクションを発揮してピンチを切り抜ける。小柄で可憐な美少女なのに、新世代の最強ヒロイン登場として、世界中で騒がれている、“ジージャー
”に、お話を伺いました。タイと日本を舞台に、阿部寛さんと共演したことも話題になっています。

―ヒロイン抜擢のきっかけを教えてください。元々アクションスターを目指していましたか?

image 「別にアクションスターを目指した訳じゃないんです。実は高校生の時に父が亡くなり、私が家計を支えなければならなくなりました。また、大学に進学する学
費も必要になりました。私はテコンドーを習得していたので、家族のため、将来のためを考えて、自分の好きなマーシャルアーツの特技を生かして、とにかくど
んな役でもいいからと切実に思い、アクション映画のオーディションを受けたんです。そこで、アクション監督でもあるパンナー・リットグライさんに出会いま
した。」

「結局、オーディションで受けたのとは別の映画に出演することになり、アクションと演技の訓練を受けることになりました。映画会
社の社長、プラッチャヤー監督、そしてパンナー・アクション監督が、巣晴らしいチャンスをくださったので、その期待に精一杯応えたいと思いました。無我夢
中で過ごして、気がついたら映画の撮影に入るまでに、訓練だけで約4年が過ぎていました。」

 

―具体的にはどんな特訓でしたか?またアクションスターのトニー・ジャーさんからも指導を受けたと聞きました。

「トニー・ジャーさんは、とにかく忙しい大スターですから、最初の頃に古式ムエタイの基本の型を指導していただいたぐらいです。パンナーさんの直弟
子に直接指導を受けました。また、会社には約30人の専属のスタントマンがいるのですが、その先輩たちに、身のこなし方など、映画の現場でのアクションに
ついて、一から教えてもらいました。映画の撮影をしながらも、常に一緒に稽古してきたので、スタントマンの皆さんには本当にお世話になりました。」

―今回、自閉症でありながら、素晴らしい身体能力を発揮するという女の子を演じられましたが、役作りで工夫された点は?監督からはどんな演技指導がありましたか?

「私はアクションの素養はあったのですが、演技は全く初めてでした。自閉症の子供という設定は、監督のアイディアです。私のような小柄な女の子が、
大人をアクションで倒していくリアリティを持たせるために、自閉症の子供達が時に信じられないような凄い能力を発揮するという事実を元に、“ゼン”のキャ
ラクターを設定したのです。そこで自閉症の子供を演じるために約半年研究しました。スタッフからの資料、『フォレスト・ガンプ』や『レインマン』などの映
画のDVDも見ました。本も4,5冊読み、インターネットからも情報を集めました。」

「撮影前に演技のワークショップも受けました。実際
に施設で3日間自閉症の子供たちと一緒に過ごしました。1日目は、みんなの様子を観察して、動作、歩き方、しゃべり他や泣き方など、一般的な特徴を掴みま
した。2日目以降は、1人を選んで、その子と1日中一緒にいました。その子の動作をひとつひとつ、全部真似してみました。」

「監督は私に、『ジージャーならこうゆう時どうする?』と考えさせて、自由に演じさせてくださいました。でも、監督のリクエストもきっちりあって、それは外さないように演じて欲しいとも言われました。」

―阿部さんとただ2人で歩いて行くシーンを見たのですが、本当の親子のような温かい雰囲気がありました。阿部寛さんと共演された感想は?

「私は演技が初めての新人俳優なのに、阿部さんは日本のベテランの俳優さんと聞いて、お会いする前からとても緊張していました。実際にお会いして、
とてもきちんとした方だと思いました。阿部さんは、心に響く演技をしてくださったので、私は演技を意識しないで、自然と阿部さんの娘になることができまし
た。阿部さんに抱きしめられたシーンがありますが、演技でなく、本気で涙が出てしまいました。」

―ところで、4階から飛び降りながらのアクションシーンは見ていて、とてもハラハラしました。本当にすごいですよね!

「(前略)…心から大好きで、がんばって努力を続ければ、実はどんな女の人でもアクションはできると思います……」(インタビュー後編に続く)

―日本での撮影は2005年の4月、福岡でした。その時の日本と日本人の印象はいかがですか?

「撮影の時は、桜がとてもきれいだったのが印象に残っています。基本的に日本人もタイ人も撮影スタッフは同じでしたから、仕事はし易かったです。日本は元
々大好きな国で、すごくいいところです。撮影中で印象に残っているのは、日本の方の気遣いです。現場のお弁当に、お弁当会社の方が“撮影の成功をお祈りし
ています。”と書いた紙をつけてくれていて、タイではこんなの無いので、スタッフと喜んで写真を撮りました。お弁当も美味しかったです。それから北九州で
は、防波堤での撮影で風が強くてものすごく寒かったのですが、きれいな場所だったのを覚えています。」

―ジージャーさんのアクションヒーローは、誰ですか?

「やっぱりジャッキー・チェンさん、そしてジェット・リーさんが大好きです。ジェット・リーさんといつか共演できれば、とても嬉しいですが、もちろんヒロインなんてとんでもない。同じフレームに収まれれば幸せなので、どんな役でもいいなと思っています。」

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―お休みの日はどんなことをされていますか?それから好きな日本食は?

「お休みだったら、1日中のんびりしていることが多いです。本が1冊あれば1日過ごせてしまいます。あとは普通だけど、ショッピングや映画ですね。日本料理は好きな物は多いですが、特に鮭の照り焼きときざみ昆布が好きです。」

―話は戻りますけど、4階のベランダでのアクションシーンは、見所満載でした。これからの演技とアクションについての意気込みを教えてください。

「4階から飛び降りることができたのは、実は地上でアクション指導の先生が怖い顔で私を見ていたからなんです。あの先生に怒られるぐらいなら、高い
所から飛び降りた方がマシかなと思いました。そして飛び降りることができたので、自分に自信がつきました。怪我することはぜんぜん平気です。だって傷なん
ていつか治りますから。演技については、始めたばかりの時は、演技が何なのか全く分かりませんでしたが、今では頑張ればできるんじゃないかと思えていま
す。演技することを愛するようになりましたね。私はマーシャルアーツが心から大好きで、夢中で続けてきたら、アクションができるようになっていました。大
好きなことをがんばって努力を続ければ、実はどんな女の人でもアクションはできるんですよ。本当にそう思います。」

心から大好きで、がんばって努力を続ければ、実はどんな女の人でもアクションはできると思います。

インタビューを終えて

ジージャーが、アクションスターの道を進んだきっかけを聞いて、取材中に筆者はこっそりと涙ぐんでしまいました。あの派
手で軽やかなアクションの裏に、そんな想いがあったなんて。いちばん最後の、『大好きなことをがんばって努力を続ければ、実はどんな女の人でもアクション
はできるんですよ。本当にそう思います。』を、実感として、真顔で話してくれたジージャー。“アクション”を“自分の好きなこと”に置き換えれば、多くの
人の人生の応援メッセージになると思いました。あの日は彼女のインタビューをさせていただけて、心から良かったと思いました。読者のみなさんも、スクリー
ンの中の彼女に会って、勇気と元気をもらってみませんか?

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「チョコレート・ファイター」
5/23より新宿ピカデリー他全国ロードショー
公式サイト:http://www.chocolatefighter.com/

女性自身5月26日発売号にジージャーのグラビア写真も掲載されています。

プロフィール

愛称“ジージャー”こと、ヤーニン・ウィサミタナン
1984年3月31日生まれの女子大生。11歳からテコンドーを始め、13歳で黒帯取得後、
18歳で三段を取得。高校3年生の時、アクション映画「七人のマッハ!!!!!!!」(パンナー・リットグライ監督/05年日本公開)のオーディションで
見出され、4年間アクションを猛特訓の後、本作「チョコレート・ファイター」の主演に抜擢。

インタビュー タイ式芸能ライター 白田麻子

 

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