Vol.1 作品を通して役者人生を語る

 ――今回の作品は、昭和実録ものになると思うんですけども、時代的に言うと、戦後の混乱期から東京オリンピックで、日本が復興する辺りの男たちの物語ということになると思います。その中で、中野さんの役は特に、主人公の兄貴分ということで、非常に主人公を男の道に引っ張っていくというか、ある意味優しく見守りながら、ある時は厳しくという役だと思うんですけど、演じられていかがだったですか。

中野 わりと最近は、主人公よりもですね、そういう役のほうが多いので。年齢的にも、それでいいと思ってますしね。やっててまあ、もともと気の知れた中村繁之君っていうのは事務所が一緒ですから、彼がジャニーズから移ってきた事務所が僕と同じところだったんで。まあ、気心知れてる仲間ですし、白竜さんもそうですから、とてもやりやすかったですね。僕が何を出しても受け止めてくれるし、向こうが出しても受け止められるという自信の元にあったので。

今回の役どころで何か学んだところは?

中野 よく批判される内容ではありますけども、好きなんですよ、やっぱり。『仁義なき戦い』から始まって、その前の佐分利信さんの『日本のドン』から、そっちの役をやりたい、そういうところに行きたいって思いながらやってきたのでね、決してチョロがやりたくてやってきたわけじゃないんです(笑)。やっぱり夢はここだったのでねわりと地がね、やんちゃ坊主だったんで、そっちを求めたんじゃないですかね。逆に本当は俳優としてはチョロみたいな、ああいう別人をやらされたほうが育っていくと思うんですけど、僕自身が。それに、負けたくないっていう気持ちでやるんですよね、いつも。

――でも、やっぱり際立った役だったですね、美月っていう役は。観させていただいて周り役者さんも達者ですけど、やっぱり中野さんがいないとしまらないんじゃないかなっていう。

中野 台本にね、とても助けられているのと、やっぱりキャスティングでそういうところに入れてもらってるっていう配慮というか、プロデューサーの配慮でそうなってるんだとは思うんですけど。それをもう少しね、よくできたらいいなと思いながらいつもやってるんです。

――今回、中野さんが演じられた美月という役は、そういった意味では志半ばで果てていく役ではあったんですけども、なんか演じてる中で、その美月という役に対して思い入れというか、こういうふうにしたとかってありますか。

中野 特別の思い入れはありません。いままでも志半ばにして果てていくという役はたくさんやらせてもらったんですけど、一応その中でも、なんて言うんですかね、一つ一つ自分の背景とかで、考え変えてるつもりではいるんですけどね。やっぱり、死ぬ時に二人の顔とか、主役の顔ですかね。繁の顔をこう、頭の中で思い出してるんですよ。なんかこう。そういう、自分の中で、自分のためだけの、自分だけのためですよ、人に見せるためではなくて。自分だけのためではそういうことはしていますけど、一回一回。必ず主役だったり、自分の女房だったら女房でもいい、敵役でもいい、誰かの顔を必ず頭の中に入れてるっていうのはありますけど。それでやってるっていうことはありますけどね。

――中野さん、ちょっと年齢のお話されてたんですけど、これからアラフォーからアラフィーになっていく過程で、その年代の方がすごく逆に元気な感じがするんですよ。で、特に男くさい方々っていうのが。寺島(:寺島進)さんとか、やっぱり男が男でいられる役者というか。男の存在感ってすごくしっかり出せる年齢になられたと思うんですけども、そういうところで、役者としてどうですか。

中野 まだ足りないと、僕は思うんですね。どうしても憧れの先輩たちが年を取っていきますよね。年を取っていくと同時にその人たちを憧れてっちゃうみたいな。まあ、松方(:松方弘樹)さんだったら、松方さんみたいに、もっともっとああいう年配になったら、ああいうふうになりたいとか。どうしても憧れが先に立ってしまうもんですから、もうその年にいるのに。

松方さんが『修羅の群』やった年より超えてるのに。なんかそこに達してない自分が、主役だからとかそういうことじゃなくて、あの雰囲気に達してないことがちょっと分かるんですね。なんで、やっぱり役者って、多分ずっと追っかけ続けるんじゃないですかね。だから、わりと年取ってくると、もう時間がないと思うのか、どんどん元気になるのか。残り少ないと思っちゃうのか。残り少なくはないと思うんですけど。あと、じゃあ、三十年しかないとか、そういうふうに思ったら、もう芸能生活二十五年なので。あと、もうあと半分。折り返し地点に来たなと。じゃあ、あと半分ね。

今までは、売れないかな、今度いい役来ないかな、なんて、細かいこと気にしてたんですけど、全く気にしなくなっちゃって。来た役をとにかくグチャグチャに食ってやると。まず来た役を噛み潰して演じてやるっていうふうにしか思ってないんですよね。だから、仕事に対する不満はあまりないんですよ、そんなには。ただ、噛み締められるのかどうかだけなんですね。もうなんかいい役じゃなきゃいやだとか、多少はありますよ。だけども、噛み締められるかどうかのところなんですよね。役が来て、小沢仁がクシャクシャにするのと、中野英雄がクシャクシャにするのでは違うんだっていうところをやっぱりね。よく僕は小沢さんと二人でしゃべりますけど、そこは一致してるところだと思いますよね。

だから、彼とやると燃えるんですよ。勝てないので。やっぱり二つ先輩であるっていうこと自体でもう勝てないんですよ。なもんで、ここで勝てないので、いつも戦っていける、挑戦していける。哀川翔だと、もう平伏せるしかないわけですね(笑)。だけど、小沢仁志だと、やっぱりこう、ちょっと兄貴な、ちょっと同世代な。あの人はすごく許してくれるところが強いので、僕を引き出してくれるんですよね。だから、「小沢、このやろう」って思えるんですよ。兄貴に逆らう弟みたいなもんで。一番燃えるじゃないですか、弟は。だから、彼とたくさんやりたいっていうのは、やっぱりいつも熱望をしてるんですけどね。あと、弟のカズ(:小沢和義)。あの二人は僕の宿敵だと思ってるんで。もうすごい大昔からかわいがってもらってるんですけど、実は、僕が役者になる前から。いつもやっぱりあの人を見てきたんだなって、最近思うんですよね。とても恋悩むずのない「顔面暴力」なんですけど。

一同(笑)。

中野 芝居ととなるとね、とても素敵な男なんですよ。なので、是非今度小沢さんの取材を

――そうですね。この間、実は取材をしようと思っOK出したんですけど、うちの女性記者から、「それは無理でしょう」って。「『女性自身』で小沢さんは無理でしょう」っていうわけで、ちょっと(笑)

中野 だけど、意外と怖系(こわけい)の顔をした人も好きだっていうのもあるのでね。

 

 

中野英雄 なかのひでお

 

’641222日生まれ 京都府出身 哀川翔に誘われ一世風靡に入団 ’92年『愛という名のもとに』のチョロ役で人気が沸騰。その後、ドラマ・映画に活躍、『FILMFACTORY』では監督・脚本にも挑戦した。『暴れん坊将軍ⅩⅠ』(’01’03テレビ朝日系)『セーラー服と機関銃』(’06TBS系)などのドラマ、『特命リサーチ200Ⅹ』(日本テレビ系)などのバラエティに出演

 

 

 

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