第1回 SONHOUSE40年の歴史
――三度目の再結成になるんですが。特に七〇年代から、約四〇年近く、皆さんのバンド活動も四〇年経っているということになるんですけれども。実感として日本のロックシーンが変わったなとかありますか?
柴山 そのときそのときで、パンクがあったり、テクノがあったり、色々やったものは、たぶん変わったやろうし。その間、俺、なにもやってなかったので、実感はないですね。もともと付き合っている人間とかが、割と近い音楽をやっているやつとしか付き合わなかったので。あまり実感はないですね、変わっていったということに関して。ただ、親父がずっとやっていない間も、生き残ってきたのが不思議だなと思うぐらいで。
――鮎川さん、どうですか、この四〇年の歴史は。
鮎川 うーん、ちゅうか、ロケッツで三二年、サンハウスで八年、変わったか変わらんかとか、あんまり考えたこともないっちゅうか。変わった日もあるし、変わらんようなバイブレーションは残っていたり、えらい違うねっていう時代もあったりするじゃろうけれど、だからどうだっていう。俺達はやるのか、やらんのか、いつもそれでスイッチは、やるとやらんのふたつしかないけ、やるというほうに入れたまんま、今日に至っとるっちゅう感じですね。
柴山 確かに考えてみりゃ、レコード盤からCDになったしね、八ミリとかなんとかとかいうのからビデオになったし。
――メディアが変わって、ダウンロードになって。
柴山 そういうのから考えていくと、音楽もきっとシステム的なもの、作っていくことに関しても変わっていったよなとは思うけど。この間、八ミリかなにかで撮ってもらったんよ。
鮎川 ふーん、八ミリで。うんうん、なんかあった。
柴山 撮ってもらって、それを見ていたら、ものすごいスケールが広く見えるじゃない、粒子が粗いから。ビデオで見ると、ものすごく、子供がしよるようにしか見えないじゃない。このくらい変わっているのかなと思ったの、音楽自体がね、ずっと。出てくるエネルギーみたいなものって、そのくらい変わったのかも知れんなぁとは、今聞かれたときに思ったけど。
――こういう仕事をしているので最近実感するのは、デジタル化が進んで配信するようになって、写真とかもそうなんですけど、捨てるものになったなという感じがするんですよ。僕等が子供のときは、レコードを買ったらレコードをどんどん貯めて、CDも自分達の中で貯めていったんですけど。今、デジタルの配信なので、曲がよければ、ある容量には入れていくんですけど、それがいっぱいになると捨てていくみたいな。だから音楽も、そういう意味で言うとすごく変わった気がして。その中で今、サンハウスが活動して、かつライブをやるっていうことって、すごく意味があると思うんですよ。
柴山 意味があるのかどうかは知らんけど、そういうのに飢えたような人も来るんやろうしね。確かに普通、CDで聴けば、そんなに変わらないのかも知れんけど。やっぱり質的なものもだいぶ違うのかも知らんね。最近できた音楽と、サンハウスがやっていたころの音楽とは、まったく質が違うから。逆に新しく感じたりする人も出てきたりしているのかも知れないね。
――どうですか、去年のロックの学園なんかもそうですけど、ああいう十代とかの子達がゾロッと来て、自分はまさか鮎川さんが先生をやるとは思っていなかったので、あれだったですけど。世代を超えてとかもあると思うのですが。
鮎川 俺、なにを喋ったかも思い出さんし、タジタジやったですけどね。
柴山 若い子がいっぱい来てた?
鮎川 うん、若い人達来とって、ビックリしたのは、好きなベースは奈良さんですって言うた若い子がおって。ちょっとその瞬間だけは、えらいリアルに嬉しかったけど。いやー、なんか縁あって、みんなと会えるっちゅうんで出かけていったけれども、やっぱしね、自分で見つけるもんっちゅうのが基本やと思うんですよ。人が、今はこれだとか言うたら、もうそっちは、まず信用しないっちゅうか、反対側を向くとか。そんなんで、ロックっちゅうのを、ずっとみんな聴いてきて、本当にサンハウスやら、その中でお互い認め合った、たった五人しかおらん人達、極端に言えば。そんな仲間で作った音楽やったんですね。
今、何々ロックだと、めんたいロックを始めとして、そげん言えば、めんたいロックって言えば、もうみんなめんたいロックっていう言葉に安心するとか、そんなんあるわけないしね、みんな違うし。あんときも言ったかも知らんけど、ロックってみんな違うけ。違うけ、よかとぞち言うてくれるのがロックで。違うといかんち言うのが体制やったり、人を使う側の考えじゃないですか、先生とか、学校とか、社会とか。ちょっとでも違うより、なるべく同じ無難な考えを持っとるほうがいいけ。そやけど、ロックって一回きりの人生、人と同じことがあるわけがないっちいうところから始まっとるからですね。
そういう意味で言えば、ロックっちゅうのは、いつもそげなふうに思うとる人は、いつの時代も、若い人にもおるし。その代わり、いつもブームを待っとるみたいな、他力本願で楽しみたいに、ドカッと来るのを喜ぶ人も、いろんな人がおるのは、それは今も昔も変わっとらんので。