濱田岳 伊坂幸太郎&中村義洋コンビの最新映画4作連続の出演に「役者冥利に尽きる」
味のある演技と表情で人気の濱田岳が、主演を務める映画『ポテチ』。『アヒルと鴨のコインロッカー』『フィッシュストーリー』『ゴールデンスランバー』と、原作・伊坂幸太郎、監督・中村義洋の2人がタッグを組んだ、4作品目の映画となる。
はまだ・がく★
88年6月28日生まれ、東京都出身。小学生のときにスカウトされ、俳優としてデビュー。04年『3年B組金八先生』(TBS系)に出演し、注目を集める。映画『アヒルと鴨のコインロッカー』(07年)で、第22回
高崎映画祭最優秀主演男優賞を受賞。13年公開予定の中村義洋監督作品『みなさん、さようなら』でも、主演が決定している
映画『ポテチ』
Ⓒ2007伊坂幸太郎/新潮社
監督/中村義洋 仙台にて先行公開中 5月12日(土)より、新宿ピカデリーほか全国公開
Ⓒ2012『ポテチ』製作委員会
――最初に、完成作をご覧になっての感想をお聞かせください。
「ものすごい充実感がありました。68分の作品なのに、いい意味で『この映画、いつ終わるんだよ』っていう。まるで2時間の映画を見たような感じが残りましたね」
――中村義洋監督から、4度目の出演ご指名となったわけですが。
「役者冥利に尽きるな、と思っているんですけど、僕にとって『中村組』は、いちばん居心地のいい組なんですよ。その人たちと過ごせる時間っていうのが、本当に毎日、楽しくて。『もっと撮ってもいいんじゃないの?』という気持ちになりました」
――何度も仕事をともにしている監督だからこそなんでしょうか。
「中村監督って、演技の話をあまりしなくて、いつも本番直前まで冗談を言って過ごしているんです。だから、初めて中村組で仕事をする人が、僕たちの関係をみてびっくりするんですよ。友達に近いんですかね。気があうんですよ、とっても」
――演技については最低限の話をして、あとはお任せということなんでしょうか。
「『こういうことをしてほしい』というのもないですね。僕、自分のなかで、笑いの感覚が近い人が、いちばん気の合う人だと思っているんです。監督がまさにそれなんですよ。だから、狙っているところがいっしょというか。それで、とくに話し合ったりもしないんです」
――濱田さんが思う、この作品の魅力は?
「井坂幸太郎さんの作品といえば、怖い部分があるんですよね。でも、『ポテチ』にはそれがないんです。だから、めずらしい作品のひとつかなと思っていて。とは
いっても伊坂作品らしく、ほかとは違うテイストの爽快感もしっかりある。そして、それを中村監督が撮る。だから、面白くないわけがないというか」
――『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』そして今回の『ポテチ』と、仙台を舞台にした3作品に出演していらっしゃいます。仙台の印象はいかがですか?
「『アヒルと鴨~』が公開されてから、自分で実感できるくらい、お仕事の量や、町で名前を呼ばれることなどが増えて、環境が変わってきました。それだけに『アヒ
ルと鴨~』は、自分のキャリアで外せない作品になり、それとともに、仙台も僕にとって外せない場所になりました。だから、伊坂幸太郎さんと中村監督の作品
と聞くと『また仙台にいけるのかな』って思うんです。『フィッシュストーリー』は、仙台が舞台ではなく、残念と思ったくらいで」
――お気に入りの場所はできましたか?
「まだ、特別に好きなところというのはできていないんですけど、『牛たん 炭焼 利休』にはよく行きます。『「極(きわみ)」定食』を必ず食べますね。東京にもあるんですけど(笑)」
――今回、主人公の今村忠司を演じましたが、濱田さんとの共通点はありますか?
「いまだに役づくりというのがよくわかっていなくて。ただ、いつも、キャラクターと自分の共通要素を見つけるという作業はしています。今回の今村くんだった
ら、彼の持つ『ド』がつくくらいの純粋さや、まっすぐなところを、僕の中で引き出して。そして、今村くんサイズに広げて、カメラの前に立つ。もちろん、ど
の役もキャラクターは違いますが、どれも僕といえば僕なんです。とはいえ、正直なところ、そんなに深く考えていないんですけどね」
――演じる上で、今村忠司という人物をそう分析して、撮影に臨んだわけですね?
「語幣を恐れずにいうと、コミュニケーション上手な人から見れば、今村くんはすごいバカなんですけど、純粋な人なんです」
――どんな役も、濱田さんが演じると強く印象に残ります。でもそのたび、本当の濱田さんはどういう人なんだろう? という興味も見る側には湧いてきます。ご自身は、自分をどう分析されているんでしょう?
「ふふっ(笑)。ぼぉっとした、のんきな男です。マイペースで、食べ物のこだわりもあまりなく、服に関しても、とくに好きなブランドが決まってはいないし。欲
があまりないんですよね。人から『変わっている』といわれることはありますけど、どこが変わっているか自分でもわかりません。でも、あまりあせらない性格ですね」
――昨年、今年と、ドラマやCMなど、これまで以上に活躍しています。原動力は何でしょうか?
「先ほども言ったように、のんきな男ですから、まわりの環境に左右されるということはないんですよ。ただ、デビューした9歳のころから感覚は変わってなくて、
現場で照明さんやカメラマンといった、職人さんの話を聞くのがすごく好きで。なので、お仕事が増えるのは本当にうれしいことなんです。現場に行く機会が増えますからね」
――役者という仕事の魅力をどういうところに感じていますか。
「この仕事って、理不尽なことも多いじゃないですか。たとえば『100回レッスンを受けたら連ドラに出られます』とか、そういう努力が認められないんです。今の芝居に自分では満足がいったとしても、それを決めるのはお客さん。そういう世界で声をかけてもらえるっていうのは、人としてとてもうれしいことであって。運が続くかぎり、出させてもらおうという気持ちです」
――では最後に見どころなどをお願いします。
「現場で先頭に立ってきた中村監督が『自分の作品でいちばんになるかもしれない』と言っていた作品です。原作の伊坂さんも『原作より面白いと言われたらどうしよう』とおっしゃっています。役者からすれば、そんなお2人の作品に出られただけでもすごくうれしいです。それに、信じている人がそこまで言うんだから、
お客さんにも喜んでいただけると思うんですよ。その点、自分のなかでも思い出に残る作品になったと思います」