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映画『カミハテ商店』で主演を務めた高橋惠子。彼女が演じたのは、自殺の名所といわれる崖の近くで、ひっそりと商店を営む、初老の女性、千代。本作は、京都造形芸術大学映画学科の学生とプロのスタッフ・キャストがタッグを組む、「北白川派映画芸術運動」の第3弾作品だ。

たかはし・けいこ☆

55年1月22日生まれ。北海道出身。70年、映画『高校生ブルース』で女優デビュー。体当たりの演技が大きな話題を呼ぶ。同年『おさ
な妻』でゴールデンアロー賞新人賞受賞。おもな出演作に映画『花物語』(89年)『ふみこの海』(08年)などがある。13年には映画『俺俺』の公開が控
えている。

映画『カミハテ商店』

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監督/山本起也 11月10日(土)~、ユーロスペースほか全国順次公開
(C)北白川派
(オフィシャルサイト)http://www.kitashira.com/

 

――高橋さんは、千代という女性を演じるに当たって、老けて見えるようなメークをしたとお聞きしました。
「はい。年齢よりも疲れて見えるようにしたかったので、いろいろ考えて、しわを増やしたりしました。だからメークを落としたとき『あ、若返った』って、ちょっとうれしくなりました。こんなにも老けメークをしたのは初めてです。台本を読んで、あの場所で自殺する人を迎えている女性なら、元気はつらつ、きれいでいてはいけないと思って。セリフも少ないですしね」

――役は監督と話し合って作っていったんですか?
image「役作りに関して話し合うことはなかったです。撮影しながら、自分で探っていたようなところがあって。ラストシーンは、撮影をしていく中で、自分なりの答えを見つけたんですよね」

――印象的なラストシーンでした。
「私が感じたものを、見ている方も感じていただければと思います。自分なりの解釈を見つけるまで、考えて胃が痛くなりました。楽しい場面はどこにもないですからね」

――もし高橋さんが千代と同じ境遇にいたら、どういう生活を送っていますか?
「あそこで、ああいうことを自分には続けていけるか、ですよね。あまりにも孤独ですから。私だったら、その前に結婚しています。さびしがり屋なので(笑)」

――京都造形芸術大学映画学科の学生たちと共同作業をしてみて、現場の雰囲気はいかがでしたか?
「作品の内容は重いですけど、若い人たちのエネルギーを感じました。みんな役者だけじゃなく、衣装やメークの助手をやったりと、ほかを手伝いながらの撮影でした。未熟な部分もまだあるので、怒られながらも、一生懸命がんばっていましたよ」

――美しい風景も印象的ですが、島根県にある島で撮影されたそうですね。
「本州から船で1時間くらいの、きれいな島でした。ご飯を近所の方が協力して作ってくださったり。日常から離れての撮影でしたので、千代を演じる上ではよかったですね。これが毎日、自宅から通っていたら、気持ちの切り替えができなくて、辛かったと思います。家に帰ると家族がわんさかいますから(笑)。それと夫(映画監督の高橋伴明氏)が今回、現場にプロデューサーとしてずっといてくれたので、安心感もありました」

――心強かったのはどんなときですか?
「冬の撮影で、寒かったので現場で火をおこしてました(笑)。それと、朝、撮影へ持っていくお茶を作ってくれていたんです。そんなことはこれまでなかったので驚きました。制作発表のとき『私は今回、高橋恵子の付き人で行きます』と言っていたんですけど(笑)」

――高橋さんが思うこの作品の魅力は、どういうところでしょう。
「淡々とした話ですが、じわっと感じてもらえるものがあるような気がします。『生きること』の中にある、ささやかだけど人と人とのつながり、自分がいることが誰かの生きる力になるとか、逆に相手がいることが自分の生きる力になる、そういうことの発見を感じました。人はひとりでは生きられないですから」

――高橋さんの「生きる力」は、具体的には何ですか?
image「家に帰ると、子供、孫、犬、猫、カメ……と、私を力づけてくれるものがいっぱいありすぎて、力が余りすぎて(笑)。母は87歳、孫は4人います。仕事場に行けば人と出会えるし、近所の喫茶店の方も、私の力になってます。近所の人とのささいな会話とか、限りないですよね」

――お孫さんが4人!?
「今年生まれたので4人なんですよ。もう、にぎやかで」

――4人のお孫さんがいらっしゃるおばあちゃんには、まったく見えません! その美しさ、若さを保つ秘訣はあるんですか?
「心がけているのは、頭を使ったら体を動かすことです。頭だけ使っていたってよくないですね、体も使わないと。バランスがとれていないと、必ず体に不調が出ます。エクササイズは、日常生活でできる程度でいいんですよ」

――なるほど。では、最後に作品のPRをお願いします。
「撮影中と完成を見て、印象が変わりました。とくに音楽のトーンが、物語とはまた違った雰囲気を作っていて、気に入っています。これからの寒い季節に合う映画だと思いますので、ぜひ見てほしいです」

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