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人間の強さと弱さ、仲間との絆、生への執念、ゾンビより恐ろしい人間の残虐性・・・。恐怖が支配する極限世界で、ありとあらゆる人間の本質がリアルに描かれる『ウォーキング・デッド』は、まさに見る価値のあるドラマだ。「ゾンビなんて気持ち悪いし・・・」なんて敬遠してたら、もったいない! その証拠に本国アメリカでは回が進むごとに最高視聴率記録を次々に更新、最新話となるシーズン3の第8話では1520万人というケーブル局のドラマ史上最高視聴者数を記録した(おそらく、これもすぐに更新されるが・・・)。

全世界122カ国で放送される、歴史に残る傑作ドラマで、主人公以上に人気なのが(特に女子に!)、今回PRで来日したダリル役のノーマン・リーダス(44)だ。もし、ショットガン背負って、バイクで爆走するコンテストがあったら、ぶっちぎりで優勝しそうな超ワイルドなルックス。そして、ハートに響く少ししゃがれた、渋く、甘い声。

六本木の高層ホテルで行われた30分1本勝負! まずは写真撮影から始まった。

 

「オ~、ナイス トゥ ミー チュー」

 

聞きなれたダリルの声で、礼儀正しく握手であいさつ。取材は最初からフランクな雰囲気で始まった。

まずは、窓際で椅子に座っての撮影。ノーマン自身、写真家としての顔も持つという情報が事前に入っており、実はちょっとビビっていたカメラマン。

 

ノーマン「それは、ライカ?」

カメラマン「そ、そうです・・・」

ノーマン「ちゃんとした写真学校を出ないと使えない機械だよね」

カメラマン「そんなことないです! 買えば誰でも使えますよ・・・」

ノーマン「いや、難しいよ。だって、飛行機のコックピットよりも多く、何に使うかわからないボタンがあるだろ(笑)」

そんな会話でさらに和む撮影現場。ジョークを言いながらも、写真はめちゃめちゃかっこいい!

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場所を移ってもらい、カーテンをすべて締めて、部屋を真っ暗にして次のカットへ。

なぜか、ベッドサイドのボタンで自動にカーテンが上下するのが気にいったようで

「ベッドに寝転がりながら、一日中やろうかな(笑)」と楽しそう。

カメラマンの注文に次々に応えて、いろいろなポーズをとってくれるノーマン。

さすがは元プラダのモデル、どれも決まりすぎ!

カメラマンがカメラのモニターで、こんな感じですと見せるとひと言。

「マジカル!」

カメラマンを有頂天にさせる魔法のひと言。さすが、写真家の気持ちがわかってらっしゃる。カメラマン門嶋氏が気分よく撮影を終了したのは言うまでもない。

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そして、いよいよインタビューだ。最初にお断りしておくが、筆者は『ウォーキング・デッド』の、そしてノーマン・リーダスの大ファンである。まずは、自己紹介がてら、会えた喜びを伝えてみた。

 

―僕は、この作品の大ファンで最初からずっと見てます!

 

「オ~、センキュー! センキュー」

 

―毎週、ホント楽しみで・・・

 

「オー、クール! クール、ベリー、クール、センクス!」

 

―今、すごい場面で終わってて(シーズン3の第8話)、悶々としてますよ。

 

「アイ、ノウ。アイ、ノウ。アイ、ノウ(笑)」

 

ノーマンのセリフがすべて英語のままになっているのは、あまり意味のない会話だから。ファンである僕が、本人のしゃべったままの言葉を正確に記憶しておきたかった、ただそれだけだ。なので、みなさんは気にせず、先を読み進めていただきたい。今後はすべて、日本語訳で書かせていただくので。

 

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―このドラマは人間のあらゆる感情がうまく描かれているドラマだと思います。この作品について、あなたが最初に感じたことはなんですか?

 

「僕はもともとニューヨークに住んでるんだけど、LAっていうところは新しいショーが始まる前のパイロットシーズンっていうのがあって、いろんな新番組の台本をもらって、いくつかの作品のオーディションに行ったんだ。そのときは警察ものと弁護士もの、医療ものとありきたりな新作ばかりで『ウォーキング・デッド』だけが異色だったんだ。この作品はフランク・ダラボン(監督および製作総指揮)、ゲイル・アン・ハード(製作総指揮)、グレッグ・ニコテロ(スペシャル・エフェクト)、ロバート・カークマン(原作および製作総指揮)といった最高の製作者たちが揃っていたので、最初から絶対にいいものができるに決まってると思っていた。

あと、すごく惹かれたのがリックのキャラクター。すごく頑張っているんだけど、毎回、毎回、間違った判断をしてしまう。喪失感だったり、必死さみたいなものがにじみ出ていて、ヒーローなんだけど答えを持っていない、常に答えを模索しているところがすごくよかったんだ。パイロット版を撮っていたときに、アンディ(リック)がダラボンから言われていたことがすべてを表してる。ゾンビに囲まれているシーンで、タンクから飛び降りてやっと逃れたんだけど、その時に足をネンザしてしまう。それが、お前の設定だよ、ってね。うまい表現だと思ったね(笑)」

 

―この作品を見ている女性たちの間では、おそらくダリルが一番人気なんですが・・・

 

「オ~ラ~~イ(笑)! うれしいね」

 

―そのダリルは最初は荒くれ者でアウトサイダーな存在でした。でも、今では不言実行、仲間のために先陣をきって行動し、最も頼れる存在になっています。このキャラクターの変化はどのように生まれたんでしょうか?

 

「この役を演じるためには、なんでダリルがリックたちの集団に一緒にいるのか? その理由を考える必要があったんだ。ダリルは自分で狩りもできるし、武器も使える、自分を守ることもできる・・・だからリックのグループに一緒にいなければいけない理由はないんだ。他のメンバーはひとりじゃやっていけない、誰かに守ってもらわなければいけない存在で、一緒に寄り添いあっているのはよくわかるだろ。だから、なんで彼がそこにいるのか? 自分なりに考えたんだ。

まず最初に、リックのグループと一緒にいることで人間として成長していきたいという面がある。初めて、誰かに頼られる自分を発見して、ひとりの人間として成長することができたんだ。メルル(ダリルの兄)と一緒にいたら、どうしようもない田舎者で、ドラッグやって、人種差別主義者で、たぶんそっちの方向にいくしかなかった。でも、兄弟2人が離れたことで、やっとそこから抜け出せた。断ち切ることができて、本当の自分というものに巡り合えたんだ。最初、脚本家たちはダリルがドラッグやったり、人種差別的な発言をするシーンを用意していたんだけど、自分はそういう演じ方はしたくなかったんだ。環境的にはそういう世界にいたけれど、本当はそういう生活を恥じているっていう複雑な部分を表現したいと言ったんだ。今までの生活なら絶対につるむことのなかったリックたちと一緒にいることで変わってきたダリルを見せたいし、一緒だったからこそ自分の存在理由を見つけだすことができたんだ。だから、彼は残るんだ。本当は、自分ひとりのほうがサバイバルできるのにね。

ダリルは決してリーダーになりたいわけじゃないんだ。問題が起きたときにみんなを座らせて、『おまえはどう思う?』とか、そういう話し合いをしたいわけじゃないんだ。やらなければいけないことを、静かに注目を浴びることなく実行する。そこにはエゴはない。思っていることがすぐに顔に出るタイプだし、そういう誠実さが魅力なんだ」

 

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―非常に深いキャラクター設定ですね?

 

「だから面白いんだ。なるべく自分でも面白くなるように演じてるよ」

 

―僕はダリルが打ったクロスボウの矢を回収して再利用するシーンがリアルで大好きです。あれは監督の演出ですか?それともあなたのアイデアですか?

 

「両方だね。もともと矢は少ない本数しかない。いろいろな人がブログで『いったいあの矢は何本あるんだ?』って話になるから、ちゃんとリサイクルしてるよってところを見せておかないといけないだろ(笑)。

じつは、いちばん最初の登場シーンで、出てきて30秒後にゾンビを打ったんだけど、そのゾンビはスペシャルエフェクト担当のグレッグ・ニコテロが演じているんだ。そのときに、ゾンビの頭を踏んでグッと矢を引き抜くというのが演出的に面白いと思ったし、実際にグレッグの頭を踏むってこともやってみたかったし(笑)、『踏んでいい?』ってきいたら『いいよ』って言うんで、そこからやったんだ。後からグレッグがエフェクトを足して、抜いた矢から、血がしたたり落ちるシーンができたんだ」

 

―次はちょっと作品から離れた質問ですが、日本に住んでいたことがあるんですよね。

 

「母がサンフランシスコ出身の人と再婚して、その人が原油系の仕事をしていて日本に住むことになったんだ。千葉の本大久保に住んでいたので、母に会うために年に数カ月単位で行き来してた。16歳から17歳くらいのころだよ。友達が六本木に住んでいて、フランス人なんだけど、フレンチレストランで修業していたので彼に会いにきたりとか」

 

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―そのころと日本は変わりましたか?

 

「着いたときに『原宿のホコ天にバンド見に行こうよ!』っていったら、それはもうやってないって言われて・・・昔は大好きだったんだよ。でも、ホテルの部屋から外を見渡すと、六本木の交差点だとか、アマンドだとか、自分の覚えている六本木の景色っていうのは残ってて、どこを見渡しても大都会なのに東京はとてもきれいだよね。ニューヨークと比べると。でも、夜になると夜景の感じは一緒かな。

そういえば、アマンドの反対側にブックストアがあったんだけど、あれはまだあるの?」

 

―あれは、もうなくなっちゃいましたね。

 

「ああ~、なくなったんだ。あそこはよく行ったんだけどね。

前回、来日したときに24時間のペットショップがあって、行ったんだけど、あそこは?」

 

―それは、ありますよ!

 

「あるの? 子猫の隣にふくろうがいたりして、変な感じだなと思って面白かったんだ。後で行ってみようかな(笑)」

(実際に、ノーマンはこの日の取材終了後、同店を訪問。「このサル、アメリカに連れて帰れないかな。でも、うちの猫とケンカするからダメか・・・」などと、可愛い動物たちを見て楽しんでいたそうだ)

 

―レディー・ガガのミュージックビデオ(『ジューダス』)に出演したのはどういうきっかけだったんですか? また、アーティストのミュージックビデオに出演するのは、映画やドラマとどう違いますか?

 

「レディー・ガガだけじゃなくて、レディオヘッドやビョークやローリングストーンズにも出てるんだけど、それは知り合いのディレクターに頼まれたから。

ビデオの仕事は全然違うね。2日間でできるだけ撮っちゃう、1日16時間とか働きづめで。『ウォーキング・デッド』のシーズン2と3の間に、ちょうどLAで映画を撮っていて、そのときに電話がかかってきて出てくれないかと言われたんだ。じつはその前にもレディー・ガガの映画に出ないかって話があったんだけど、都合がつかなくてね。それで、その電話でLAにきてくれないかって言われたんだけど、ちょうど今いるんだって話になって。バイクに乗ってフリーウェイをぶっとばしてほしいって言われて、ちょうどLAに1台自分のバイクを置いてるから、バイクもあるよって。それじゃあって、そのバイクの写真を撮って、レディー・ガガに送ったら、OKが出て、それで出ることになったんだ。ちょうど、週末の撮影だったんで、映画の撮影もなく、フリーウェイをヘルメットなしで90マイルくらいで走るんだけど、わざわざ警察のエスコートが出てきて大がかりなものだった。でも、あのビデオを撮って、なぜレディー・ガガがあそこまで人気があるのかがわかったよ。彼女に対するリスペクトもあがった。だって、朝3時、『はい、女のコたちと踊って』、次4時、『男性と踊って!』、そして5時、『今度は自分一人で踊って!』って、彼女は平気でやるんだけど、僕は疲れちゃったからカメラマンに『もう素材撮れたから終わりでいいよね、終わり終わり』って、もう起きてられないって言ってたんだ。彼女は素晴らしいアーティストだと思ったよ」

 

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―もう時間なので、最後の質問です。シーズン2から3にかけてキャラクターの交代が激しかったですよね。ドラマの中とはいえ、生死を共にしてきた仲間との別れが続きましたが、どうでしたか?

また、いつか来るかもしれない自分の死についてどう考えていますか?

 

「最悪なことに、誰でもいつでも死ぬ可能性があるドラマなんだ。誰かがいなくなると、“死の晩さん会”が開かれるんだ。泣いて、ハグして、写真もいっぱい撮って・・・。基本的にみんなとても仲がいいからね。この作品はニューヨークやロサンゼルスで撮ってるわけじゃなく、ジョージア州のなにもない森の中で撮影してる。マネージャーもいない、エージェントもいない、セレブリティっぽい要素がまったくなく、自分たちしかいない空間なので本当に仲よくなるんだ。よく映画が終わったら『電話してね~』って別れるんだけど、実際電話しないことがすごく多いんだ。でも、このメンバーはふだんから友達同士普通に電話しあってる仲間なので、誰かが亡くなると本当に心が痛むよ。

ダリルが死ぬときかぁ・・・。首にトランキライザーかなんかをダートガンで打たれるくらいの勢いじゃないと、自分は絶対に出ていかないね。セキュリティーにセットから引っ張り出されるくらいじゃないと、死ぬ気にはならないね(笑)」

 

―とりあえず今回PRで来日されているので、まだ死なないんだなって安心してます(笑)。

 

「あはは(笑)。でも、わからないよ! もしかしたら、これで最後かもしれないし(笑)」

 

インタビュー終了後、日本語で「ありがとうございました!」と言って、握手をしてくれたノーマン。終始、明るく、インタビュアーを楽しませようという心遣いが感じられ、ドラマでの役柄以上にとってもナイスガイでした。

 

(撮影/門嶋淳矢 取材・文/永島大)

 

 

【プロフィル】

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ノーマン・リーダス

69年1月6日、アメリカ生まれ。父はシチリア島出身、母はイギリス出身。親の都合で日本に住んだこともある。ロンドンやスペインに住んだ後にLAに戻り、ハーレー・ダヴィッドソンの店で働きながら画家・写真家として活動。その後、インディペンデント映画などの出演を経て、映画『処刑人』(99年)や『ブレイド2』(02年)で注目される。97年にはプラダのモデルに抜擢。また、レディー・ガガの『ジューダス』のミュージックビデオにも出演。

 

【作品紹介】

『ウォーキング・デッド』

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“ウォーカー”と呼ばれるゾンビがはびこる黙示録的な世界で、保安官リック率いる生存者たちが安住の地を求め恐怖に立ち向かう。ゾンビ作品という枠を超え、極限状況におけるさまざまな心理や仲間との絆をリアルに描き、人間の本質に迫ったヒューマンドラマの金字塔。

 

【放送スケジュール】

シーズン2(全13話)がBSスカパー!にて放送中

http://www.bs-sptv.com/program/page/001373.html

シーズン3 FOXチャンネルにて放送

[前半]第1~8話:2月26日(火)23:55スタート 月曜~金曜23:55

[後半]第9話以降:3月23日(土)24:00スタート【日本最速放送!】毎週土曜24:00

http://tv.foxjapan.com/fox/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/1498

 

 

【DVD情報】

シーズン1&2のDVDが発売&レンタル中

http://www.kadokawa-d.jp/lineup/walkingdead/

 


 

【撮影オフカット】

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