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映画『恐竜を掘ろう』で松方弘樹が演じた主人公の草介は、孤独を感じながら美術店を営んでいる初老の男性。これまで、男くさい役を演じることが多かった彼に、そんな意外な役柄をオファーしたのは、本作で長年の夢だったという映画監督デビューをはたした、俳優の大和田伸也だ。

まつかた・ひろき★

42年7月23日生まれ、東京都出身。60年、映画『十七歳の逆襲 暴力をぶっ潰せ』で俳優デビュー。その後、『仁義なき戦い』シリー
ズ(73年~)に出演し、人気を博す。プロデューサーとしても活躍し、『蔵』(95年)では、日刊スポーツ大賞・石原裕次郎を受賞。現在放送中の大河ドラ
マ『八重の桜』(NHK総合)に出演中。

映画『恐竜を掘ろう』

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監督・脚本/大和田伸也 3月30日(土)~、有楽町スバル座ほか全国ロードショー
(C)「恐竜を掘ろう」製作委員会
(オフィシャルサイト)http://kyoryu-horou.com/

 

――物語は、大和田伸也監督の故郷・福井県の、自然豊かな風景や観光スポットとともに展開されていきます。監督とは以前から交流があって、今回のオファーにつながったのでしょうか? 
image「以前、ご一緒に仕事をしたのは、関西テレビの『けんか安兵衛』(75年)というドラマに監督がゲストで出演したときの、1回きりなんです。ただ監督も、『水戸黄門』の撮影で京都の太秦の撮影所に来てらっしゃったので、そこで顔を合わせることは何度もあったんですけどね。とはいえこの『恐竜を掘ろう』が、40年近く経っていっしょに仕事した2本目の作品になりました。オファーの理由は聞いてないです。監督に聞いてみてください(笑)」

――40年近く! そうなんですね。
「まず、監督から『いっしょにお仕事しませんか』というご丁寧な手紙をもらって。それから脚本を読んでみました。これまでに演じたことのない役柄だったから、ちょっと面白いかなと思ったのと、その後、監督と食事をして、熱意が分かったのでね」

――映画の中では恐竜がひとつのポイントになっていますが、恐竜についてはお詳しいほうですか?
「僕はあまり詳しくはないけれど、40年、京都に住んでいましたから、福井県に恐竜博物館があることは知っていました。いまだに発掘が続けられているし、僕らも撮影させてもらいましたけど、岩板のところに本当に恐竜の足跡があるんです。生で見ると感動しますよ!」

――今回の役は、沢木草介という、無気力な男性です。どのように分析して草介を演じられたんでしょうか?
「僕にとって演じやすいのは、まず自分に近い役。もしくは、自分と180度違う性格の役。中途半端に似ている程度だと演じにくいんです。僕は草介のような無気力型ではなく“前がかり(攻撃的)”に生きていますので、今回は逆のタイプの役どころです。草介は、生活に不自由はしていないけど、気がついたら婚期を逸していた。なんとなく、生きる気力に乏しいというか、活力のない毎日を送っている。あまりに情けない男性でしょ? 僕を知っている人だったら、あまりにタイプが違うので『この役ができるのかな?』と疑問に思うでしょう」

――草介の気持ちに共感できる瞬間はありましたか?
image「共感できる部分はなかったですね。だけど今の世の中、年代に関わらず、草介のような人はいるのではと思っています。つい先日の取材でも、今の30代・40代の人たちは、プラスマイナスゼロの、浮き沈みのない毎日を送りたいという人がいると聞きました。これから、いちばんのがんばり手となるべき世代がそのようなことを言っていては、今後の日本が不安です。現状維持というだけでも大変な時代なんでしょうけど、ほんのわずかでも毎日上がっていかないと。がんばった人にはそれなりのものが返ってきますから。今は『草食男子』といわれて、女性と食事しても割り勘、なんていう人も多い時代みたいですが、僕の辞書にそれはないですから」

――松方さんのように、精力的に生きていくための秘訣はありますか?
「楽なほうに流れないことでしょうか。何か選択肢があったら、リスクがあるほうにいかないと。楽なほうを選んでいたら怠惰な人間になります。僕も、つらいことは1日に何回かあるけれども、寝る前に忘れることにしています。そして、釣りに行けるとか、楽しいことを考えつつ寝ます」

――今、お話をしていても、70歳という年齢にはまったく見えませんし、とても若々しさに溢れています。
「今年で仕事を始めて54年目で、71歳になります。それも元気なればこそ。定年のない仕事で、年齢に沿った役をいただくことができますから、あとは滑舌と足腰ですよね。でも、どこの現場に行っても後輩ばかりになって。だんだんと先輩がいなくなって寂しいです。先輩がいると“よりどころ”になるんですよ」

――逆に、後輩の方たちから頼りにされる存在なのでは?
image「すごく大事にしてもらえますよ。年を取るってのも悪くないことです。ただし、それに甘えてはいけない。体力はちゃんとしておかないとダメですよ。マグロなんて、並みの体力では釣れないですから。最近では歩いていると『あ、マグロの人』と言われます」

――釣りをするために体力作りもしっかりする、という感じなんでしょうか。
「それはあります。マグロを釣りたいから、ウォーキングをするとかね。無理しない程度に、気が向いたときに。生活も運動も、何事もほどほどに、です」

――では、最後に、作品のPRをお願いします。
「監督の思い入れがものすごくつまっている作品で、お子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで楽しめる、人間賛歌の映画です。心温まる内容なので、ぜひ見ていただきたいですね」

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