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演中の舞台『頭痛肩こり樋口一葉』は、お盆にふさわしい作品だ。明治2(1890)年、小説『たけくらべ』を書いた樋口一葉こと夏子(小泉今日子)は、19歳だった。それから24歳で夭よう逝せいし、その2年後まで、毎年、7月16日の夕刻に仏間に集う、夏子とゆかりの5人の女たちの生きざまを描いている。
夏子は若くして樋口家の家長になり、母・多喜(三田和代)と妹・邦子(深谷美歩)との生活を支えるために奮闘する。その家を訪れるのは、玉の輿こしから女郎に落ちる八重(熊谷真実)、あの世とこの世を行き来する幽霊の花螢(若村麻由美)、そして愛華みれ演じる旗本のお姫様・鑛こうだ。
江戸のしきたりが残る時代、「女はこうあるべき」と常識や世間体を教えられてきたが、女性にも自由が認められる風潮になり、鑛は時代の流れに翻ほん弄ろうされる。
「私が育った鹿児島の家でも、父がお箸をつけるまでご飯を食べてはいけなかったし、お風呂も男の人から。あの窮屈な感じを思い出しました。私は宝塚時代に、ずいぶんそこから解放されましたけど(笑)」
1年ごとに、6人の境遇は変わっていく。背後には、それぞれの伴侶の影響も見え隠れする。たとえば鑛の夫は、どんな職に就いても長続きしない性分だ。
「でも、鑛はほれてしまっていますからね(笑)。もし私が独身だったら、作品の解釈も役柄の理解も違っていると思います。ふがいない旦那さんのため一生懸命になる女心も、夫婦というものを知った今はわかるような気がして」
愛華は以前、悪性リンパ腫という大病を乗り越えた。そのときに支えとなったのも、夫だったという。その結果、入院中にもらった舞台出演を目標に、立ち上がるのすら困難だった状況から1年足らずで、復帰することができた。
 
現在、発病から5年。「寛解しました!」と語る彼女を大病から救ってくれた舞台は、くしくも今回と同じ井上ひさし作の音楽劇『きらめく星座』だったそうだ。
 
「つらい治療にも耐えられたし、抗がん剤の副作用も治まりました。好きな仕事はまさに『特効薬』ですね。それに夫をはじめ、医療スタッフのみなさんや舞台の関係者の方には頭が上がりません」
 
この舞台でも、登場人物がみな、人生のさまざまな局面で自分の選択、決断を繰り返す。そして、その因縁の糸を絡ませながら「今年のお盆」があることを実感するのだ。
 
■プロフィール
あいか・みれ☆’64年11月29日生まれ、鹿児島県出身。’85年に宝塚歌劇団に入団。花組トップスターを経て、’01年に退団。その後は女優として活躍。おもな出演作にドラマ『ゲゲゲの女房』(NHK連続テレビ小説)、映画『昴』(’09年)舞台『きらめく星座』(’09年)などがある。
 
■告知など
舞台
こまつ座第100回記念公演
『頭痛肩こり樋口一葉』
 
東京公演/7月11日(木)〜8月11日(日)、紀伊國屋サザンシアターにて。オフィシャルサイトはhttp://www.komatsuza.co.jp/
 

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