映画『醒めながら見る夢』で村井良大は、孤独な青年の文哉を演じた。孤児院で育ち、緊縛師の男性に引き取られた文哉は、感情を表に出さない人物だ。それが、陽菜という女性に出会ってから、心の中がざわつき始める。
むらい・りょうた★
88年6月29日生まれ、東京都出身。07年に「風魔の小次郎」で主演デビュー。これまでの出演作に、テレビドラマ「乾杯戦士 アフターⅤ」(テレビ埼玉ほか)、舞台『真田十勇士』、『弱虫ペダル』シリーズ、などがある。
映画『醒めながら見る夢』
監督/辻仁成
新宿武蔵野館ほかにて好評上映中!
(オフィシャルサイト)http://www.sameyume-movie.com/
©2014「醒めながら見る夢」製作委員会
――本作は、同名タイトルで2011年に舞台で上演されましたが、映画化にあたってストーリーは変更されているのでしょうか。
「メインキャストの優児と亜紀の関係性は変わっていないのですが、僕が演じた役が舞台のときとは変更されています。舞台で僕は悪魔という役でしたが、映画では、孤児院から緊縛師の男性に引き取られた文哉という役です」
――今回演じられた文哉は、過去が細かく描写されていないので、演じるのは難しかったのではないでしょうか?
「そうですね。一番情報が少ないキャラクターで、台本にも詳しく描かれていなかったので、この役は難しいなと思いました」
――そのような中で、どのように役をつくっていかれたのでしょう。
「監
督の辻さんともいろいろお話をさせていただいたんですけれども、両親がいなくて孤児院に入っていたところを五郎という男性に引き取ってもらって……と。文
哉は自分の中の感情を忘れてしまっていて、生きることに目的がないし意欲がない。未来を見据えているわけでもなく、希望を持っているわけでもなく、ひじょ
うに捉えづらい人間でした。寡黙な人間ではあるけれど、けして何も考えず生きているわけではなくて、常に何かを考えている。だけど何を考えているのかわか
らない」
――それらを表現するのはすごく難しいですよね!?
「ですから、文哉のつかみどころのない部分を表情や仕草で表現するた
めに、なるべく現場でも笑わないようにしていましたし、一言も話さずにいました。目で語れるようなところを目指して、現場では静かにしていました。難し
かったです。現場ではずっと静かに過ごしていました(笑)」
――京都で撮影が行われたそうですが、観光地へ……ということもしなかった?
「撮
影の、最初の頃は多少、空き時間があったんですが、それでもホテルで1人でいました。外出といっても近くのコンビニに行くくらいで。人間って、あまり話さ
なかったり、表情を動かさなくなると、生きている心地がしなくなるということに気づくことができました。だから、文哉は生きている心地がしていなかったん
だなと(笑)」
――文哉と村井さんに共通点はありましたか?
「ないほうがいいかなと思います(笑)。本人は純粋な気持ちでいるん
だけれども、周りから見たら引かれそうなことをしますから。それって、自分が見えてなくて、余裕がないということになりますから。でも、僕にも過去に、文
哉のように人を好きになりすぎて周りが見えなくなった時期がありました」
――村井さんの趣味って何ですか?
「仕事でしょうか(笑)。これといったものがなくて。休みの日は散歩したり、まったりとしていますね」
――芸能の世界に入られたきっかけは?
「高校3年生のときに進路に関して考えて、何か面白い仕事に就いてみたいと思い、漠然と役者が面白そうだなと思い、自分で応募したのがきっかけでした」
――じっさい役者業をされてみての感想をお聞かせください。
「苦しいこともあるけど、楽しいこともたくさんある。けど、やりがいのある仕事だと感じることが多いので、それはありがたいです。自分の中で役がつかめてない時が一番苦しくて、楽しいのは、役が染みついているときですね」
――では最後に村井さんが思う、この作品の魅力を教えてください。
「僕は、このお話がすごく好きなんです。悲しい気持ちにもなるけど、幸せな気持ちにもなる。メッセージ性を強調して出しているわけではないけど、心にさっと
入ってくる。それが辻さんの世界観なんだと思います。最後は勇気を与えてくれる作品ですよね。生きていく力、一歩踏み出す力というのを与えてくれる作品だ
と思います」