「以前は自分で言うのも何ですけど(笑)、イケメン俳優のひとりとしてクールな部下や後輩の役が多かったんです。最近は、純粋に芝居を評価されるようになりました」
映画『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』で、要潤は未来の通信社「タイムスクープ社」の時空ジャーナリスト・沢嶋雄一に扮する。’09年からNHKで始まったテレビシリーズの、集大成ともいえる作品だ。客観性を重視するテレビシリーズとは違い、タイムスクープ社の内部の事情が描かれているのが映画の特徴。
時空ジャーナリストはタイムワープ技術を駆使し、教科書に載らない名もなき庶民の暮らしぶりや生きざまを取材する。そして、歴史の中で埋もれた真実をあぶり出していく。体力の消耗を抑えるパワードスーツや、情報端末と一体化したゴーグルなど、超高性能の装備で、今回は戦国時代にワープ。日本史上最大のミステリーといわれる安土城焼失の謎を追う。満を持しての映画化の感想を聞いた。
「『ついに来たな』って感じですね。20代から出演していた作品で、俳優人生の半分をともにしてきたという思いが強いんです。幸せです」
人気の理由のひとつには、企画の斬新さがある。市井の人々にスポットライトを当て、歴史を動かしてきたのは、まさに懸命に生きた彼らであったということを見せつけた点だ。
そしてもうひとつは、まるでドキュメンタリーを思わせるような、リアルな設定や描写だ。エキストラ各人のスタイリングなど、衣装は細部にまでこだわっている。役者たちはピンマイクなどを付けず、遠くの声もカメラマイクだけで拾い、字幕でカバーする手法を採用。また、リハーサルをせずにライブ感を大切にしているという。
「台風の日、暴風雨で立っているのがやっとという中でさえ、撮影があったんですよ。カメラマンは、ツルツルの石段を、カメラを担いだまま上っていくような状況でした。演技プランは立てられないし、新人ジャーナリスト役の夏帆さんは、滑ったり転んだりして大変でした。でも、そんなハプニングを、逆に臨場感につなげているんです」
時代劇、SF、ドキュメンタリー……多くの要素が入っていて、ジャンルをひとつにくくれないところも魅力。過去の真実を追究するために調査を続ける、時空ジャーナリストの活動とその結果には、ハラハラさせられたり、納得させられたり。「社会科の授業で見ました」といった声も多いそうだ。ちなみに要自身は、意外にも学生時代、日本史が苦手だったとか。
「年号と出来事を記憶するのが大変で。だから、自分でも不思議ですよ、そんな僕がカッコよく過去にさかのぼる役を演じるなんて(笑)。でも、だんだんわかってきました。いつの時代も、人の心は変わらないということが」
劇場版には、歴史を修復する作業も出てくる。人生の修復したい時期や出来事は、自身には何かある?
「ありません! 後悔なく生きてきたので。人生には、大小のターニングポイントも選択肢もいっぱいあります。『選ぶ』というのは、人生を自分で決めているっていうこと。正しいのかどうかって、前進して振り返ったときにしかわかりませんよね。だから僕は、運命は自分でつくっていくものだと思うんです」
時空ジャーナリストの活躍を、劇場で体感しよう!
■プロフィール
かなめ・じゅん★’81年2月21日生まれ、香川県出身。’01年、ドラマ『仮面ライダーアギト』(テレビ朝日系)で俳優デビュー。これまでに映画『UDON』(’06年)、『GOEMON』(’09年)、『謎解きはディナーのあとで』(’13年)、ドラマ『龍馬伝』(NHK大河ドラマ)、『空飛ぶ広報室』(TBS系)などに出演。
■告知など
映画
『劇場版タイムスクープハンター安土城 最後の1日』
監督・脚本/中尾浩之 8月31日(土)~、新宿ピカデリーほか全国ロードショー©2013 TSH Film Partners