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えくぼが印象的なミュージカル界の貴公子、山崎育三郎。先輩俳優の井上芳雄、浦井健治とのユニット「StarS」は結成わずか半年で1万人のファンを集め、武道館コンサートを成功させた。
「ペンライトのきらめく光に包まれて、まるで満天の星の下で歌っているようで、鳥肌が立つほど感動的でした」
ミュージカルデビューは小学6年生のとき。オーディションで3千人の中から主役に抜ばつ擢てきされた。そして、本格的にミュージカル俳優を目指し、音大の声楽科へ。
「生徒は1学年たったの6人。みんな子供のころからプロを目指し、自分の歌や演奏に自信やプライドを持っているので、全員がライバルなんです。練習室に一日中こもって、練習の繰り返しでした」
そんな自身の苦悩、葛藤とも重なるのが、舞台『船に乗れ!』。彼が演じる主人公、サトルは音楽一家に生まれ、チェロの英才教育を受けてきた。自分を偉大な人間と思い込んでいた彼だが、受験に失敗し、三流の音楽高校に。人生最大の挫折を味わったのだ。
その後、さまざまな出会いや事件を経て大人になるサトル。青春のきらめきと残酷さを、美しいクラシックの名曲に詞を乗せ、歌い描いた「交響劇」だ。劇中では、高校に通うサトルを、45歳のサトル(福井晶一)が見守っている。
「『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』のステージに立ちたいと、ひたすら練習に励んでいた高校生の僕に、今の僕が『必ず夢はかなう』と言ってあげられたら、迷いや不安がなくなるでしょうね」
彼自身は高校生のとき、アメリカに語学留学したのが思い出だという。2千人の生徒のうち、アジア人は彼ひとり。
 
「いじめられました。でもね、彼らは、英語を話せなくてもアピールには耳を貸すんです」
体育館でのダンスパーティを隅で見ていると、次々と生徒たちが大きな輪をかき分けて、中心に躍り出ている。
「このままじゃ友人もできないし、英語もしゃべれない。そうだ、あそこで踊ってみせよう。失敗しても構わない。注目を浴びて、人生を変えなきゃ!それで、勇気を出して飛び込んだんです」
やがて「イク‼ 最高だぜ!」の掛け声が。シャイだった彼が、認められた瞬間だ。
「たちまち人気者になって。自分の殻を破る気持ちよさを実感して、以来、思いを積極的に伝えるようになりました」
本作でも、そんな彼が率先して提案した、すばらしいアイデアが採用されている。
「母校から後輩たちをオーケストラとして呼んで、いっしょに舞台に立つんです。最近はクラシックを学ぶ子たちが減ってきているので、音大を盛り上げられれば」
将来を見通す、すてきなプリンスの姿は、若々しくすがすがしい。
やまざき・いくさぶろう

’86年1月18日生まれ、東京都出身。’98年、ミュージ
カル『フラワー』に主演。’01年、東邦音楽大学附属東邦高等学校声楽科に入学。アメリカへの語学留学中は、全米高校生クラシック声楽コンクールのミズーリ州大会で上位入賞。’06年に東京音楽大学声楽音楽家コースを中退し、’07年、『レ・ミゼラブル』のマリウス役で正式デビュー。以来『、モーツァルト!』『ロミオ&ジュリエット』『ミス・サイゴン』などのミュージカルに出演している。

 
舞台交響劇『船に乗れ!』

12月13日(金)〜21日(土)、東京・東急シアターオーブにて。問アトリエ・ダンカン(03‐3475‐0360)

 

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