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フランス映画『タイピスト!』は、とにかくカラフルでかわいらしい作品。ヒロイン・ローズが、唯一の特技であるタイプの早打ちで世界一に上り詰め、恋も成就させるサクセスストーリーだ。
1950年代、田舎暮らしのローズが憧れの職業である秘書を目指し、パリの保険会社で面接を受けるところから物語は始まる。オーディションでローズ役を射止めたのが、デボラ・フランソワだ。レジス・ロワンサル監督によれば
「ぼんやりしたところが魅力。人前で顔を赤らめたのが採用の決め手」だったそう。
「合格と聞いたときは、ガッツポーズで『キャ〜ッ』って叫んでしまいました(笑)。オリジナルの脚本で、タイプの早打ち大会なんて聞いたことないから斬新。女性が主役のコメディ映画も少ないでしょ。誰にもローズ役は渡さない、という意気込みで臨みました」
会社に採用されたローズだが、あまりの不器用さに1週間でクビに。ただし、社長のルイは、指1本で猛烈な速さでキーをたたく彼女の特技に目を付け、世界大会で優勝させる野望を抱く。こうして、彼とドジ社員の二人三脚は始まった。まずは「1本指打法」を、爪とキーを同じ色のマニキュアで塗り分け、10本指で打てるよう矯正。指の運動にピアノの特訓、ジョギングで持久力をつけ、さらに心理戦に備える訓練も。地道な努力を積み重ねて、田舎娘は都会で成り上がっていく。
「2年前、実際にあった大会を見学しました。そして半年間、毎日タイプの練習。映画では吹き替えや早回しではなく私自身が打って、白熱のシーンを撮ったんですよ」
ローズ同様、夢をかなえてすがすがしい笑顔になれるなら、つらい努力も悪くない。
「強い意志で夢に向かう女性って、男の人の目にも輝いて見えるんですよね。この映画のメッセージは『誰が何と言おうと、ほしいものは手に入れよう』。ローズは何事にも全身全霊を注いで、早打ち世界一の座とルイをゲットしちゃったんです」
努力こそが人生を切り開く、そのことを楽しく教えてくれる名作だ。
 
でぼら・ふらんそわ

’87年5月24日生まれ、ベルギー出身。’05カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた『ある子供』でデビュー。同作と、’06年のスリラー映画『譜めくりの女』でセザール賞有望若手女優賞にノミネートされ、’08年『Le premierjour du reste de ta vie』で同賞を受賞。’10年には、フランス人監督による阪神・淡路大震災の被災者のその後を描いた『メモリーズ・コーナー』で阿部寛、西島秀俊らと共演している。

映画『タイピスト!』
監督・脚本/レジス・ロワンサル 8月17日(土)~、東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー

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