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『地獄でなぜ悪い』は、一見ヤクザもののように見えて、じつは青春コメディ映画。全力投球し、開き直って夢を追う登場人物たちの姿は、ぶざまに見えて、笑えて泣ける。
物語の中心人物である、暴力団の組長・武藤を演じるのは國村隼。ふだんはコワモテで周囲をビビらせるが、心根は優しく、女性に弱い。獄中の妻(友近)の夢をかなえてあげるため、奔走中なのだ。その夢とは、娘(二階堂ふみ)を主演にした映画を撮ること。
敵対する暴力団の組長(堤真一)やヒットマン、8ミリカメラを手にあこがれの映画製作に没頭する高校生らを巻き込み、大奮闘する武藤。映画そのものを素材にして、遊んでいる作品だ。
「それまで何も縁のなかった人たちが、映画を撮ることでひとつになる。そのときのエネルギーたるや! バカげたことを一生懸命にやるのって、いいですねぇ」
映画は、独特の世界観で知られる園子温(そのしおん)監督の、若き日の実体験がベースになっているそうだ。
「映画を撮りたいのになかなか撮れなかった、まさに監督の思いが詰まった作品です。ひどい状況に置かれた人の前にカメラを据えて、監督の視点で生まれてくる映像の面白さが楽しめます」
日進月歩の映像技術や機器の進化。デジタル時代に移行する前の物語では、まだフィルムのカメラが主流だった。
「8ミリ時代をご存じの方や、当時、プロを志していた方たちには、懐かしく見てもらえると思います」
そういう彼自身もメカ類が大好き。自動車の設計に携わりたくて、エンジニアを志したこともあったそうだ。しかし勉強を始めたものの、どうも向いていない、とドロップアウト。そして始めたアルバイト時代に出合ったのが、芝居の世界だった。
「クルマと映画、『モノを創り出す』っていう共通項が、いっぱいあるなぁ、と。どちらもいろいろなパートをそれぞれの専門家が担当して、ひとつの〝作品〟ができあがる。この映画にも、目標に向かっていちずになる若者たちが出
てきますが、ひとつの作品のために仲間が協力するのは、魅力的ですよ」
状況設定は破天荒。テンション高く人生をのたうち回る登場人物たちの、一生懸命の気恥ずかしさをコメディタッチで描いている。
「どの役柄も、まさに地獄へまっしぐら。でも、誰の人生だって、これに近いようなところ、ありますよ。リアリティを感じられると思います」
しかし、どんな真っ暗闇の地獄であっても、救いの手をさしのべられることもあるのが人生だ、と語る。
「僕は釣りが趣味で、海外へもプラッと行くんです。初めて行ったタスマニアでのこと。昼間に向こうの空港に着いて、レンタカーで、予約していた湖近くのロッジへ。ところが、到着時刻を逆算していなくて。クルマで3時間以上かかって、着いたときにはとっぷり日が暮れてました。管理事務所がクローズしてるうえに、雨まで降ってきて『えらいこっちゃ、どないしよ』でした(笑)」
大阪育ちの國村が、とっさに関西弁が出てしまうほどの窮地に⁉
「そんなとき、途中の案内所の明かりがついていたのを思い出して、ガーッと戻って。必死で事情を説明したら『ロッジのオーナーは友達だから、電話してやるよ』と。まさに地獄に仏』で助かったんですよ」
 
くにむら・じゅん
’55年11月16日生まれ、大阪府出身。’81年、映画『ガキ帝国』でスクリーンデビュー。’97年、主演映画『萌の朱雀』がカンヌ映画祭カメラドール賞を受賞。『KILL BILL Vol.1』(’03年)など、海外映画にも出演している。主演映画『あさひるばん』が11月29日公開。
映画『地獄でなぜ悪い』

監督/園子温 9月28日(土)〜、新宿バルト9ほか全国ロードショー。公式サイトはhttp://play-in-hell.com/©2012「地獄でなぜ悪い」製作委員会