「子供のころに見たスティーブ・マックイーンの映画『大脱走』は、今でも心に残っています。がんじがらめの不自由さから解放される爽快感や感動は、衝撃的でね。この舞台も、単なる娯楽作品として終わらない作品です」
スティーヴン・キングの小説『刑務所のリタ・ヘイワース』は、20年ほど前に『ショーシャンクの空に』のタイトルで映画化された。アカデミー賞7部門にノミネートされた名作が、日本で初めて舞台化。主人公の一人、レッドを演じるのが、益岡徹だ。
えん罪で投獄された銀行員のアンディー(成河 )(ソンハ)は、刑務所の腐敗を正し、懸命に生き抜こうとする。一方、レッドは殺人罪で終身刑を言い渡され、20年以上も服役していた。彼はアンディーから、希望こそが生きる支えになることを学んでいく―。
「打ちひしがれている人たちにこそ、見てもらいたい。何か切り抜ける手があるかもしれないと、希望を持ってもらえると思います」
アンディーは、旧態依然とした刑務所の図書館を便利に整理したり、仕事を終えた仲間に、刑務官と駆け引きをして手に入れたビールをふるまったりする。小さな幸せを見せることで、あきらめかけていた囚人たちの心を揺さぶるのだ。
「宝物みたいな、かけがえのないエピソードがいっぱい。どれも感動的で、舞台に立つ僕自身が泣くんじゃないかと少し心配です(笑)」
原作のタイトルにもなっているリタ・ヘイワースとは、マリリン・モンローやラクエル・ウェルチのように、1940年代、アメリカのセックスシンボルだった女優だ。
「アメリカの刑務所では、彼女のポスターを独房に張るくらいのガス抜きは許されていたようです。アンディーの独房に張られたポスターは、彼がいかに長い年月、収監されてきたか、時代の流れを映し出します。今回は、舞台ならではの演出で、彼女らがポスターから現実の世界に飛び出すんですよ」
囚人たちの人生が悲しく胸に迫る。重圧から解放されて自由を味わうといえば、益岡にはこんな思い出がある。
「若いころは自意識が邪魔して、どうしても不自然な演技になってしまって。それが、無名塾で勉強していた23歳のころ、顔に包帯を巻いて演じるエチュードを経験して。突然、自意識は吹き飛んで、自由になれた気がしたんですよ
ますおか・とおる
’56年8月23日生まれ、山口県出身。早稲田大学在学中から、黒澤明監督映画『影武者』(’80年)などにエキストラとして出演。卒業後、仲代達矢主宰の「無名塾」第4期生に。
おもな出演作にドラマ『翔ぶが如く』『毛利元就』(ともにNHK大河ドラマ)、『京都地検の女』シリーズ(テレビ朝日系)、映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(’11年)、舞台『負傷者16人』(’12年)、『耳なし芳一』(’13年)などがある。
舞台『ショーシャンクの空に』
東京公演/ 11月2日(土)~10日(日)、サンシャイン劇場にて。
大阪公演/11月16日(土)~18日(月)、サンケイホールブリーゼにて。ほか福岡、名古屋、松本でも公演。公式ウェブサイトはhttp://shawshank-stage.jp/