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心理サスペンス映画『危険なプロット』のフランソワ・オゾン監督は、クールな表情でこうつぶやいた。

「主役のエルンスト君みたいに、僕も親しく、ファーストネームで呼ばれたいなぁ」

オゾン監督といえば、カトリーヌ・ドヌーブらベテラン女優を起用した、ミュージカル仕立ての密室ミステリー映画『8人の女たち』がベルリン国際映画祭で高い評価を受け、日本でも話題になった。

今回の『危険なプロット』は、人間観察の力と文才を持ち合わせた生徒、クロード(エルンスト・ウンハウワー)と、文学好きの高校教師、ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)との、個人教授を軸にストーリーが展開する。

クロードは、同級生(バスティアン・ウゲット)の家庭をのぞき見て書いた作文を、授業で提出。その文才を見いだしたジェルマンは、彼に小説の書き方を指導する。刺激的な設定、読めない展開、意外な結末……。小説のコツを教えながら、ジェルマンは次第にクロードの世界観に引き込まれ、話の続きが気になって仕方なくなっていく。原作はスペインの戯曲家、フアン・マヨルガの作品だ。

「物語の内容が、僕の映画製作のプロセスに似ているから、観客にはそれも見てもらえるはずです」

過去の作品では、現実と虚構の境界線が見えなくなる中での、謎解きの面白さが評判となった。今作でも、そのスタイルは踏襲されている。クロードの書く小説を通して、人々の生活をのぞき見る2人だが、彼らの住む世界もまた、その中のひとつ。現実なのか、虚構なのか……。

「作中で、ジェルマンがクロードに『小説の締めくくりには、意外性がないといけない』と指導するシーンがあるんです。けれど、脚本も書いている僕にとっては、この言葉がプレッシャーで(笑)。そこで、ラストシーンをいろいろと考えました」

現実と虚構の問題は、映画のラストまで引き継がれていくテーマとなる。この秋、スタイリッシュでミステリアスな、フレンチ・サスペンスに酔いしれてみては?

 

ふらんそわ・おぞん

’67年11月15日生まれ、フランス・パリ出身。’90年、国立の映画学校フェミスの監督コースに入学。『サマードレス』(’96年)でロカルノ国際映画祭短編セクション・グランプリを受賞。’97年の『海をみる』を経て、翌年に発表した長編第1作『ホームドラマ』がカンヌ国際映画祭批評家週間で大きな話題となる。’01年、『まぼろし』がセザール賞の作品賞と監督賞にノミネートされ国際的にも高い注目を集め、翌年には『8人の女たち』で、ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞


映画『危険なプロット』

監督・脚本/フランソワ・オゾン
10月19日(土)~、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー。公式サイトはhttp://www.dangerousplot.com/
(c)2012 Mandarin Cinema – Mars Films – France 2 Cinema -Foz


 

 

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