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古墳とは、墳丘を持つ古代のお墓。と書くと堅苦しさが先立ってしまうが「丸みやくびれたあの形がかわいい!」と、独自の視点で古墳に惹かれ、古墳巡りの楽しさを知ってほしいと活動に励んでいるのがまりこふんだ。

まりこふん★

古墳への愛を歌う世界で唯一の古墳シンガー。13年1月に「古墳にコーフン協会」を設立、会長を務める。7年間で巡った古墳は千基を超える。古墳の持つ堅苦しいイメージをカジュアルにしたいと日夜活動を続ける。11月にはコミックエッセイの新刊が発売予定。

リリース情報

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「古墳deコーフン!」ウルカ・ミュージックレコード 1,200円(税込)
「まりこふんの古墳ブック」山と渓谷社 1,620円(税込)
「古墳の歩き方」扶桑社 1,404円(税込)

 

――CD「古墳deコーフン!」をお聞きしたら歌声がすごくパワフルで、いわゆる素人の方じゃないなと思いました。
「じつは音楽で生計を立てていまして、音楽活動の途中で、古墳に目覚めたんです。バックコーラスもやりますし、レコーディングに参加したり、ライブもやっていて。両親がミュージシャンなので、音楽が傍にある生活で育ちました」

――そこから突然、古墳に目覚めたのはなぜでしょう?
「ツアーで地方をまわっている先で、空き日がありますよね。その土地の名所はひと通り見ていたので、何度目かの大阪ツアーの空き日に『大阪城も行ったし、今日は、小学校のときに見た古墳(大仙陵古墳(仁徳天皇陵))を見たいな。あの形を見たいな』と思ったのがきっかけです。約7年前の話です」

――そうなんですね。で、じっさい行ってみていかがでしたか?
「じっさいに行ったら、大きすぎて、形が全然分からなくて。大仙陵古墳(仁徳天皇陵)って、一周すると2,850mもあるんです。だから見られないのは当然なんですけど、そんなことも当時はわからなくて、行けばあの鍵穴の形をした古墳が見られると思っていたわけです。それで悔しい思いをして。いま思えば、見られなかった悔しい思いが、古墳にはまるきっかけになったのかもしれません。『絶対いつか見てやるぞ。もっと、いろんな古墳を見てやるぞ』と思いましたから」

――最終的に大仙陵古墳の鍵穴の形は見ることができたのでしょうか。
「その後、セスナ機から見ることができました。生で見た感動はすごかった。写真の比ではありません。それからは、仕事でツアーに出るたびに、行った先の古墳を見てくるようになりました」

――4月に「まりこふんの古墳ブック」、5月に「古墳の歩き方」を出されていますが、どのような反響がありましたか。 
「テレビにも出るようになったためか、重版がかかっているそうなんです。『古墳、かわいいかも』とか『昔から好きだったけど暗いと言われそうで言えなかった。けど、言えるようになった』とか、そういう感想が届いています。あとは自治体が盛り上がって来たなと思います。『古墳でお祭りをするので歌ってもらえませんか?』とか、そういう依頼が増えてきました。おかげさまでこれからの週末は、声が掛かって埋まっている状況です。古墳祭りって意外に多いんですよ」

――へぇ、そうなんですね。古墳祭りってなんだか面白そうですね。
「あとは、10月から、はとバスもやることになりました。はとバスツアーに同行して案内して、私がバスの中で1曲歌うという『まりこふんと行く生古墳』というツアーです。そういうことをやりたかったので、決まったときは嬉しかったです」

――執筆中は、古墳について書けるので楽しかったのでは!?
「学生のころは、歴史と国語が苦手だったので、その2つを足した作業をすることになり、人生何が起こるか分からないものだなと思いました。文を書くのが本当に苦手なので、どきどきしながら書いていて、書き終わったら編集の人に見てもらって。ただ、自分が古墳を好きになった7年前は、気軽に読めるカジュアルな本がなくて、難しくて堅苦しい本ばかりだったので、7年前の自分が読みたくなるような本にしたいと思い、作業を進めました」

――調べれば調べるほど、古墳っておもしろそうですよね。
「ハマればハマるほど謎が出てくるんですよ。埴輪とか。それよりも、古墳ありきの埴輪なのに、埴輪ばかりが注目され、古墳が放っておかれるのが悔しくて。埴輪自身も古墳ありきの存在に戻りたいと思っているような気がするんですよね。あと、古墳のある場所ってとても静かなんです。それで、いろいろ考えるんですよね。『なぜここにつくったのか?』とか、埴輪にも物語があったり、壁に描いてある絵についても、『なんでこの絵を描いたんだろう?』とか、そういうことを考えると止まらなくなる。棺の形や装飾品にもいろいろなものがあって、それはそれで魅力なんですよね」

――普通に考えて、およそ1500年前のものが現存しているってすごいことですよね。
「そうなんですよ。1500年も前のものだと考えると震えがくる。それがずっときれいに残っているというのは、とても貴重なことで、住民の方々に愛されているということなんです。住人が守った古墳もあるんですよ。反対に、古墳が愛されていないところもあって、道路が横ぎっていたり、畑になっているものがあったりして」

――道路が横ぎっている!?
「そうなんです。本の中にも悲惨な目にあっている古墳をいくつか紹介していますが、古墳だと気づかないで家を建てたりしてしまったようで。時代を重ねていくうちに開発で負けてしまうんでしょうね。ここまでの歴史でなくなってしまった古墳もたくさんあると思います。開発が進む地域で残っている古墳は、住民の方が頑張ったのかと。そういうことを考えるとジーンとしてしまいますね……」

――今後、古墳がどのように広がっていけばいいなとお考えですか。
「世界に知ってもらいたいです。世界遺産になってほしい。世界3大墳墓は『クフ王のピラミッド』『秦の始皇帝陵』『仁徳天皇陵』なんですけど、その中でも一番面積がある仁徳天皇陵だけが世界遺産に登録されていないんです。世界一という大きさを誇る、素晴らしいものなのに、なんでこんな扱いなんだろうと。あれだけの広大な面積ということは、すごい年月と人の数を使って作ったと思うんですよ。これを機に世界遺産になってほしいです」

――たしかに。世界遺産になってもいいはずですよね。
「いま、動きはあるんです。堺市の方たちも世界遺産に向けて実際に動いているんですよ。私も協力しているところです。本物を見たときの感動は半端ないですから、あの感動を世界中の方々に体験していただきたいです」

――ほかに、古墳に関する夢はありますか?
「古墳フェスティバルをやりたい。世界中のアーティストが古墳で歌う音楽祭。いつかやりたいですねぇ。とにかく古墳を世界に広めていきたいです。世界中の人が古墳に興味を持って、訪れてくれる。そんな状況がつくれたら最高ですよね!」

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