「自爆攻撃は日本人の発明。それが世界中でやられるような時代になっている。僕らの年になると肌で感じるから、みんな『また始まってるよ』と言いたいと思うけどね。戦争を知っている人がいなくなると、だいたい70年くらいで戦争が起きるんですよ」
そう語るのは、隔週連載『中山秀征の語り合いたい人』第64回のゲスト・作曲家の小林亜星さん(83)。『寺内貫太郎一家』でおなじみ“昭和のガンコオヤジ”のイメージが強いですが、中山の質問にぽつり、ぽつりと丁寧に会話される姿が印象的でした。そんな2人のトーク、スタートです!
中山「亜星さんが音楽活動を始められて60年ですか。どんな時代の移り変わりが?」
小林「戦争前の日本は軍国主義で、アメリカの音楽なんかなかったと思うかもしれないですけど、みんなジャズが大好きだったんですよ。それが戦争とともに、あれよあれよとなくなっちゃう。いまの時代も似ている気がするんですよね」
中山「時代の動きと音楽の移り変わりには、何か関係がありそうですね」
小林「そうかもしれないね。生意気なようだけど、いまは競争の時代でね。何でも競争に勝たないといけない。舛添(前)都知事さんも東大法学部を卒業してからも相当競争を勝ち抜いてきたんでしょう。勝たないとならないっていうのはさみしいね。人を押しのけるということ。それは戦争の始まり、俺に言わせると。どっちが正しいかって行動するには、競争教育ではなくて情操教育が大切だと思う。競争して勉強だけやってきた人が役人には多いから大変ですよ」
中山「よくないムードになってきていると」
小林「国民もあまり考えてないよね。そういうときにふと、戦争が始まるんですよ。ヒトラーだって選挙から出てきたんですから。僕たちの経験からいうと、もう第三次世界大戦が始まっちゃってるね。それは国と国で撃ち合うとかではなくて、個人、ひとりひとりがとんでもないことをしている時代になっているということ」
中山「それを止める方法はあるんですかね」
小林「僕なんかには考え付かないですけどね。ただ、戦争で負けたことを知っている人がだんだん死んでいっちゃうからね。われわれの世代は絶対に戦争反対。勝たないといけない時代は怖いですよ」