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「僕の役・エドマンドは悪役です。出来のいい腹違いの兄へのコンプレックスから、権力を手にしたいという野望を持つ男。リア王の娘たちに色目を使い利用しようとする女たらしの男です」

 

そう語るのは、シェークスピア四大悲劇のひとつ『リア王』(8月10〜14日、東京・三越劇場)で重要な役を演じる、志村朋春(31)。主役は演技の師でもある俳優の横内正が務める。

 

「ふだんの稽古では、直接指導をしてくださいますが、今回は別に演出家の方がいらっしゃるので、何もおっしゃいません。ときどきセリフの言い回しについてそっとメモを渡してくださるくらい。的確なのでありがたいですね。それに先生(横内正)はダメ出しだけではなく、『あのセリフはよかった』などと褒めてくださることもあるので励みになります。まあ、褒められることは少ないんですけどね(笑)」

 

舞台稽古までに、セリフをすべて頭の中にたたき込むのがプロ!というのが師の教え。それも相手役のセリフもすべてという厳しさだ。

 

「もし相手役の方がセリフを忘れた場合でも対応できるようにと。でもそのおかげで代役を務めさせていただいたことがあります。たまたま主役の方が当日に具合が悪くなられて、脇役の僕が突如、主役を務めました。そのときに先生の教えが身に染みましたね。ああ、こういうことだったのかと」

 

シェークスピアといえば、長いセリフで有名。今回もさぞや苦労が……。

 

「とにかく何度も口に出して言って覚える。じっと家で台本を読むだけではダメで、行動をしているときもセリフを口にする。たとえば『なぜ俺は忌まわしい習慣に縛られ、相続権を奪われてもだまっていなければならないのだ』というセリフを、歩きながら、自転車をこぎながら、アルバイト先で食器を洗いながら……、いつも口にします。電車の中では、さすがに変な人だと思われるのでマスクで口を隠してブツブツと(笑)。とにかく四六時中。動きながら覚えると、とっさのときにも口をついて出てくるようになるんです」

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