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「すずさんはたぶん、不器用でたどたどしい話し方の女性ですが、情熱的なところもある。そうイメージしていたところに、たまたま見たのが『あまちゃん』でした。のんさんは『どんなときでもニコニコしていて、応援したくなる』タイプの女性。彼女が演じるすずさんを見ると、自然と人が愛おしく思えるようになるでしょう」(片渕須直監督)

 

11月12日に公開されたアニメーション映画『この世界の片隅に』(原作/こうの史代、監督/片渕須直)は2週連続で興行収入がベスト10入り。最初は男女比が8対2だったが、2週目には半々となり、女性客も飛躍的にアップ。平日の午前中でも立ち見が出るほどの超満員状態だという。

 

いまだテレビなどではあまり紹介されていないこの作品、まずはストーリーを簡単に。

 

広島市生まれの浦野すず(声/のん)は太平洋戦争下の昭和19年、19歳で呉市の北條家の長男・周作に嫁ぐ。“北條家の嫁”の生活は朝4時起床で共同井戸に水汲みに行くことから始まる。ご飯とみそ汁の朝ごはんで義父と夫を仕事に送り出し洗濯。回覧板の受け渡し、配給当番、ご近所の噂話……。「隣組制度」のなか助け合う地域住民の暮らしになじんでいく。

 

そんななか、幼い娘の晴美を連れて義姉・径子が出戻ってくる。心根は優しい姑と小姑だが、ストレスはたまる。なかなか妊娠できないこともあり、すずは円形脱毛症に。それを受け止めようとする周作に当たることもあったが、笑顔のあふれる平凡な幸せが確かにあった。しかし昭和20年に入ると戦局悪化が如実になり、空襲も頻繁に。そして“8月6日”を迎える−−。

 

この作品を苦節6年で世に出した片渕監督は、躍動感を得たすずの声は、「のんさんしかいない」と思ったという。監督からの熱烈オファーを受けたころのことを、のん(23)は次のように振り返る。

 

「私は戦争や暴力の描写が苦手で、これまで目を向けずにいました。戦争は『非日常な別次元のもの』と思っていたんですが、原作を読み、『戦争というのは別次元ではなく、日常と隣り合わせにあったのかもしれない』と感じました。すずさんの声を『絶対にやりたい!』と。すごく共感する部分があったんです」

 

そして、これから映画館に足を運ぶ人には、こんなところを見てほしいと願う。

 

「『どんなことがあっても日常は巡ってくる』という、ある意味、ふつうのことが切なく感じます。日々の暮らしに、幸せや笑えることがたくさん転がっている。何気ない感覚をこの作品で受け取っていただける気がします」

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