芸能スキャンダル、停滞する経済、横暴な政治……。一年を表す漢字は「金」だったものの、’16年の日本は、明るいニュースばかりではなかった。そんな日本を叱咤激励するのは、寄る年波をものともしない“最強のご長寿”たちだ。80歳、90歳を超えても“バリキャリ”道を突き進む彼女たちの、身をもって経験したからこその主張とは−−。
「’11年の東日本大震災、’16年の熊本地震のような大災害が、またいつ起きてもおかしくないのが日本です。いつでも臨機応変に対応できるような、たくましい人間になれるように、親は子どもを育てていくしかありません」
そう話すのは、作家・エッセイストの桐島洋子さん(79)は、今年7月に80歳を迎える。『文藝春秋』で記者デビューし、独立後の’72年に『淋しいアメリカ人』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。長女・かれんさん、次女・ノエルさん、長男・ローランドさんと3人のお子さんを育て上げたシングルマザーとしても有名で、「働くママ」の第一人者でもある。そんな桐島さんにとっての「子育てのお手本」は、やはり幼少のころ、母から受けた教育だったのだという。
「それは“生活者としての厳しいしつけ”です。子どもだからといって甘やかされることなく、ひとりの人間として接してくれました。家事は当番制で、女の子でも山で薪を集めてきて、うちわでお風呂の火をおこします。ご飯も火をおこして、お釜で炊く。そういう家事を多くしていましたので、後々、アメリカで放浪生活を送る際や、3人の子育てに役立ったんです」
そんなしつけには、娘に対する母の「期待」があったのではないかと振り返る。
「『女子は嫁いで専業主婦になるのが当たり前』というのが母の時代でした。ですから、キャリア志向をもっていた母も、結局、志を得られませんでした。しかし私には『どんなことがあっても、しっかりと自立して生きていけるように、キャリアのために役に立つ能力を身につけなさい』と、事あるごとに言って育てたんです」
それが後に子育てしながらもキャリアの一線で活躍し続ける原動力になったと語る桐島さん。若い世代の間で、とにかくいい男性と結婚したいという「お嫁さん志向」が高まっていることについては、はなはだ疑問に映るようだ。
「お嫁さんになったら安全だという世の中でもないんですよね。経済的な不安があるというのなら、やはり自分を鍛えることが先決でしょう。金持ちの男と結婚すれば−−という考えは、はなはだ甘いと思います」
いっぽうで、待機児童問題をはじめ子育てを巡る厳しい状況は依然としてあるのが現実だ。桐島さんは、子育て世代の読者に向けて次のように語る。
「少子化の昨今、子どものことを心配するあまり、ひとりで抱え込んでしまう親もいるでしょう。『転ばぬ先の杖』で子どものためになんでもしてあげることは、子どものためにならないんです。そこは親が、想像力を働かせてちょっと我慢すべき。やはり、『かわいい子には旅をさせよ』という考えは大切だと思います」