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「なかなか心を開いてくれない利用者さんが笑顔を見せてくれるようになり、日を追うごとに介護の仕事に生きがいを感じるようになってきました。介護では、相手の方がどのような人生を送ってきたのかを理解し、尊重したうえでのコミュニケーションが大切なんだと思います」

 

こう語るのは、元アイドルで女優の北原佐和子さん。彼女は、小泉今日子や中森明菜らと同期の「花の’82年デビュー組」。アイドル活動ののち、『牡丹と薔薇』などのヒットドラマに出演し“昼ドラ女優”としても名をはせた。

 

北原さんは、’07年にホームヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)の資格を取り、グループホームなど複数の施設に勤務。’16年にはケアマネージャー(介護支援専門員)と、難関資格を取得し、女優業の休みを利用して介護士としても働いている。女優と介護士の“兼業生活”は、すでに約10年になる。

 

「身内の介護をしているとき、キツイ言葉を投げつけられると、ついイラッとして『やってあげているのに……』という思いが頭をよぎりますよね。でも、体が思うように動かなかったり、言葉が出てこなかったりと、いちばん苦しいのは介護されている側。そんなときこそ、相手も変わり、自分の気持ちも変わる“魔法の声かけ”が有効なんです」

 

コミュニケーションの中心になるのは“声かけ”だと語る北原さん。介護がちょっとラクになる、北原さん流の“魔法の声かけ”とは……。

 

【いまご飯のしたくしますね】

食事をしたばかりなのに、「お腹がすいた」「ご飯はまだ?」と言われると、「さっき食べたでしょう!」ときつく答えてしまいがち。でもそれは逆効果。食後に「ご飯はまだ?」と言われたら「いましたくしますね」と言い、簡単な作業を頼んで、違うことに意識を向けてもらいましょう。

 

【今日はお天気がいいですよ】

デイサービスに行きたがらない人には、まず「今日はお天気がいいですよ!空気がおいしいでしょうね」などと声をかけて、外が気持ちいいことを感じてもらいましょう。

 

【きれいですね、きっと似合います】

同じ服ばかり着て、なかなか着替えてくれないときは「きっと似合いますよ」とひと言。女性なら新しい服を出したときに「きれいな色ね」「この花柄はきれいね、何の花かしら」。男性なら「モテちゃいますね」と言ってみましょう。

 

【お風呂は気持ちがいいですよ】

入浴を嫌がる理由を探して、「今日のお風呂はゆずの香りで気持ちいいですよ」「疲れがとれますよ」と笑顔で声をかけてください。

 

【一緒に探しましょう】

「物盗られ妄想」は、認知症の症状のひとつ。身近な人が疑われることが多いですが、疑われたときに頭ごなしに否定すると、かえってかたくなになってしまう可能性が。「それは大変ですね」と受け止め、まずは一緒に探しましょう。

 

【すっきりしてよかったですね】

お通じはとても大切なこと。痛みや苦しみから解放されたと理解しましょう。また、トイレに間に合わず失禁してしまった場合でも怒らずに、「すっきりしてよかったね」と声をかけましょう。

 

【これでウンがついた!】

介護をしているとよく手を洗うので、洗面所で鏡を見ることも多くなります。暗い気持ちのとき、自分の曇った顔を見ると落ち込んでしまいますよね。排せつ物の対応後に手を洗ったら、鏡の中の自分に向かって「よし、これでウンがついた!」と自分に笑いかけましょう。

 

介護する側にもされる側にも効く“魔法の声かけ”。ぜひ試してみて。

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