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「実は、政美役の子がどう動くのかを監督から知らされてないことが多くて、そのハラハラ感みたいなものが私も勇作さん(小林稔侍)もお芝居にすごく出ていると思います」

 

そう語るのは、色香あふれる中にも知性をかね備えた魅力で女性層にもファンを持つ壇蜜(37)。映画『星めぐりの町』(1月27日より全国ロードショー)で彼女が演じたのは、小林稔侍演じる豆腐職人・勇作の娘で、自動車整備士の志保。自身のイメージと大きく異なる役かと思いきや、こんな答えが返ってきた。

 

「イメージは人が決めることだと思ってます。それに、私が演じた志保さんは、タレントになる前の私に似ているところがありまして。黒土三男監督は私の中にそういうところを見いだしてくださったのかと、うれしくもありました」(壇・以下同)

 

壇の職歴をたどれば、芸能界に入る前は、和菓子店や葬儀関係の仕事をしていた。

 

「化粧っけもなく技術っぽい仕事で、毎日同じことに取り組む女でした。華やかさとは無縁で人の補助をする仕事でしたから。ただ、私自身は父といる時間が短かったので、志保のような父と娘の関係は羨ましかったかな」

 

劇中で、志保は早くに母を亡くし勇作と2人暮らし。互いを思いやりながらも口には出さない2人が、震災で孤児となった政美を引き取ることで、親子の絆を強めていく。撮影のあいだ、自身の親子関係を振り返ってみたという。

 

「10代のころは、父が単身赴任で、母は公務員で保育士の昇格試験の真っ最中でしたから。みんなもう生きるのに必死で。私も母の見よう見まねで洗濯やお料理をして、なかなかヘビーでしたね。今では家事があまり苦じゃないので、いい経験をしたかなと(笑)」

 

ロケ地の愛知県豊田市は、東日本大震災の折、千葉で被災した黒土監督の移住地でもある。志保が住む古民家の撮影では、囲炉裏の香りや木の爆ぜる音、できたての味噌汁のぬくもりに感動したという壇。

 

「日常が変わらないということの心強さ、何でもない日々がいかにありがたいことかを感じさせてくれる作品です」

 

見終わった後、「日常」に込められた願いが心にしみる映画であった。最後に、壇自身の父への思いを聞いた。

 

「とても尊敬しているんですが今も緊張することがあって。冗談を言ったりなれ合うには、まだ時間がかかるかな(笑)」

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