子育てなどもとっくに終わり、代わり映えしない日常で……なんてもったいない! いまだからこそ、あなた自身の人生を取り戻すべき。「人生100時代」を楽しみ尽くすための、「学び直し」という選択。彼女たちの一念発起を見習って、豊かな後半生を楽しもう!

 

「私、子どものころ、近所でも『出来のいい子』として知られていたんです(笑)。両親はそれがうれしかったみたい。でも、18歳で上京して女優になってからは、好き放題ばかりで、親孝行もしないまま両親を逝かせてしまった。いまさらながら『学び直しで恩返しをしたい』と思ったのが、大学院に入ったきっかけなんです」

 

演技派女優として知られる秋吉久美子さん(63)が選んだのは、早稲田大学大学院公共経営研究科。女優というキャリアが生かせる学問を探していたとき、知人から「文化人類学と社会学と哲学の要素を持った『公共経営学』がいいのでは」と助言された。

 

秋吉さんは、大学院で初めて学問の楽しさに触れたという。

 

「教授は元エース官僚で、クラスメートも現役のキャリア官僚や会社員など、みんな格好よくて、話す内容が興味深いの。そこで学んだことが、私の学生としての基礎を作り上げていく感じは、初の体験でした」

 

皆から支えてもらったことも忘れられない思い出だ。

 

「論文作成で悩んでいたら、クラスメートたちは『こういう文献読んだらいいよ』とか、『○○教授に聞いてみたら』などと助言をくれるんです。女優の仕事って、徹底的に『与える世界』。自分の持っている才能をありったけ出して、最終的に枯渇するほど。でも、学問の世界は『もらえる世界』なんですね。こんな世界があるなんて、芸能生活を35年していて初めて知りました」

 

仕事と学問の両立は予想以上に大変だったが、「物事は単純明快でよい」ということも学べたという。

 

「自分は公職に就いた経験がないので、地方分権のレポートの資料にハンディがあることを教授に伝えたら、『君は頑張り屋さんなんだから、頑張りなさい』と言われて驚きました。『疑ったり悩んだりせず、とにかくやる。単純明快なのが学問の世界なんだなぁ』って」

 

修士論文の提出時期と、舞台『見知らぬ乗客』の舞台稽古が重なったときもそうだった。役作りのためのダイエットと、思うように進まない論文作成による睡眠不足が重なり、心身ともにヘトヘトだった。

 

「ある日、教授が『君、その爪はどうしたんだ』と言うんです。ふと手を見ると、マニキュアが剥げて、爪も長いの短いのバラバラ。『こんなことでボロボロになる必要はないんじゃないか、爪を切りなさい』と言われ、われに返りました。帰り道にコンビニで爪切りを買って爪を切った瞬間、『あ、私、(論文)できるかも』と思いました。まるでコメディ映画みたいだけれど(笑)。でも本当にそれで吹っ切れて、やりきれたんです」

 

修了したいまでも、当時の仲間とのつながりは続いている。

 

「年に2回くらい同級生と会います。久しぶりの再会でも、何のてらいもなく話が進むし、気を使う必要もない。クラスの集合写真を見た人にいつも指摘されるのですが、女優やってるときよりも大学院時代のほうが自然でいい笑顔をしてるって(笑)。だって、本当に楽しかったんですから!」