「ブラーボ! ブラーボ!!」

 

満員の客席はそのとき、歓喜の声と割れんばかりの大きな拍手に包まれていた。歌舞伎俳優・中村勘九郎(36)、中村七之助(35)らによる「平成中村座 スペイン公演」が6月27日、スペイン・マドリードのカナル劇場で開幕した(7月1日までの全6公演)。日本スペイン外交関係樹立150周年を記念した目玉企画だ。最初の演目「藤娘」では、あでやかな七之助の女形に、客席からどよめきが起こった。

「ただ、キレイというだけではなく、じっくりと内面まで見てくれているのが伝わってきました」

 

終演後にこう語った七之助。前日の現地メディアの取材では、男性が女性を演じる「女形」について、数多くの質問を受けた。舞台を見た30代のスペイン人の女性は、うっとりした表情を浮かべ次のように話した。

 

「踊り、背景、音楽のすべてが調和していて、まるで息をするのと同じようにリラックスして踊る姿に釘付けになりました。あっという間に夢が醒めてしまったような感じで、もっと長く観ていたかった」

2つ目の演目は「連獅子」。クライマックス“毛振り”の勢いが増すと、比例するように客席からの拍手がどんどん大きくなっていった。幕が下りると観客は立ち上がって喝采。勘九郎は中村鶴松(23)、片岡亀蔵(56)らとともに2度のカーテンコールに応じた。「2度目は想定していなかったな」とうれしそうに微笑んだ勘九郎。40代のスペイン人男性も興奮冷めやらぬようすで語る。

 

「実際に観たことで本物の歌舞伎を知ることができ、大好きになりました。今度はもっと長い作品をぜひ観たいです」

初日終演後、勘九郎は「すごく真剣に見てくれてうれしかった。うそのない大きな拍手を送ってくれたのは、役者冥利に尽きる。伝統と受け継がれてきたものの強さは、言葉の壁を越えることができる」と力を込めた。

 

「平成中村座」は2012年に亡くなった勘九郎、七之助の父・中村勘三郎さん(享年57)が「江戸の芝居小屋を復活させたい。そして歌舞伎を多くの人に知ってもらいたい」と、2000年に東京浅草の隅田公園で始めた公演。その後も大阪、名古屋といった国内だけにとどまらず、ニューヨーク、ベルリンなどでも公演を重ねてきた。

そして、勘三郎さん亡き後に、たどり着いた初めてのスペイン公演。じつは勘三郎さんはスペインが大好きだった。絵画や建築、好きなものがたくさん、スペインにはあったという。生前にはその大好きな国での公演を夢見ていた。初日を終え、公演の成功を確信した兄弟は、亡き父に思いを馳せた。

 

「あれだけのお客様の反応を見ると、父もやりたかったんだろうなと思います」(勘九郎)「凄く盛り上がったよと報告したい」(七之助)