「受賞した喜びを味わえたのは、日本に戻ってきて、自宅の棚にトロフィを置いたときでした。『取ったんだなあ』と」
そう語るのは、映画『ウスケボーイズ』(10月20日全国公開)で主演を務めた渡辺大(34)。マドリード国際映画祭で最優秀外国語映画主演男優賞を受賞したときを振り返り、「全く実感がなかった」と言う。
さらに、アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭でも最優秀主演男優賞を受賞し、2冠を達成。父で俳優の渡辺謙に続けとばかり、“世界のダイ・ワタナベ”と大きく報じられたが。
「なってないですから!(笑) でも、海外で仕事をするということは、これからの時代、スタンダードになっていくと思います。僕自身、語学の勉強をして、英語の作品のオーディションを受けることもしています。海外で仕事することについて、親父からアドバイスはありませんが、ロンドンで親父が英語で芝居をしている姿を見るだけで十分教材になります」(渡辺・以下同)
本作は、日本ワイン界の巨匠・麻井宇介の思想を受け継いだ革命児たちの物語。ワイン用のぶどう栽培は困難といわれた日本でワイン造りに没頭していく姿が描かれ、実話を基にしている。ワイン造りに行き詰まる岡村(渡辺)に麻井が言い放つ、「教科書は破り捨てなさい」という言葉は、役者にも通じると話す。
「“型を破る”って、言ってできるものではなくて、やってたらそうなったという感じなのかな、と。そういう意味では、役者の芝居も、正解がないというところが似ているし、日々変化するナマモノという点でも同じ。僕もいつか、熟成したワインのように味のある役者になりたいですね。そのためにも、いまは経験値がほしい。経験こそが深みになっていくと思うから」