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同居の父(’13年死去、享年81)が、自宅の階段から落ちて寝たきりになり、半年後、母(’16年死去、享年80)が自転車で転倒し、大腿骨を骨折。春やすこさん(57)の両親の“同時介護”が始まったのは’10年のこと。

 

「毎朝5時半に起きて、両親のオムツ交換から1日がスタートしました。排せつの介助、食事の世話、掃除や洗濯などの家事に追われて心身ともに疲れ果ててしまい、ささいなことで父をどなりつけてしまったこともありました」(春さん)

 

あるとき、春さんを心配したケアマネジャーは「今やりたいことは何ですか?」と尋ねた。

 

「長女と海外旅行に行きたい、仕事をしたい、友達に会いたい、と打ち明けると、『1つずつやりましょう! ご両親も春さんのつらい顔を見るのはつらいはず。完璧を目指さなくてもいい、介護はずぼらでもいいんですよ』と励まされて、目からうろこが落ちました」(晴さん)

 

それからは介護サービスを利用しながら、ゴルフや旅行に出かけて息抜きをするようになった。

 

「2人とも無事に看取ったので、後悔はありません。今、親の介護をしている友人たちに『介護はゴールが見えないので1人で抱え込まないで。“すぼらでもいい”』と伝えています」(春さん)

 

ともに要介護5の両親を見送った春さんが、介護の相談に答えてくれた。

 

【Q】「これから大学受験を控えた子どもたちの世話もあるので、老親たちを呼び寄せて同居できるか悩んでいます。家族にどうやって協力をうながしたらいいのか教えてください」

 

【A】「『介護は手伝ってくれるものだ』と子どもたちに期待をするのはNG!」

 

2世帯住宅を建てて、春さんの両親を呼び寄せて同居を始めたのは、長男のひと言がきっかけだった。

 

「近所に住んでいた両親が体調を崩すたびに、私が救急車を呼んで世話をしている姿を見ていたので、家を建てるときに、『おじいちゃんとおばあちゃんはもう若くないんだから一緒に住もうや』と息子が背中を押してくれた。当時高校生だった息子はときどき学校から帰って来てから、両親の部屋でウクレレを弾いたり(笑)、おしゃべりしたり、楽しい時間を過ごして場を和ませてくれたのは、とてもありがたかったです」(春さん)

 

そのほかにも、子どもたちは車いすに乗った春さんの父をサポートするなど、積極的にサポートしてくれたという。

 

「受験を控えているお子さんがいると親との同居をためらうかもしれませんが、学業の邪魔になることはありませんので、安心してほしいと思います。ただし、介護は夫や子どもたちが手伝ってくれると期待せずに、介護サービスを利用すること。親が必死になって祖父母の介護をしている姿を見たら、子どもたちはできる範囲で自然と手伝ってくれますよ」(春さん)

 

無事に看取った後、両親と過ごした時間は大切だったと改めて振り返ることができたという。

 

【Q】認知症の母が私の留守中に、ゴミ出しの日を間違えて出したり、回覧板を別の家に持って行ったり、近所に迷惑をかけることが増えてきました。お隣さんにはどのように説明すべきでしょうか」

 

【A】「ご近所の人とはふだんからコミュニケーションをとり、オープンな関係を!」

 

認知症の親が近所に迷惑をかけるのではないかと思い込むあまり、近所で孤立するケースがある。そうならないためにも、春さんはふだんから、挨拶や立ち話など、積極的にコミュニケーションをとるようにしているという。

 

「親が認知症になったとしてもご近所には隠さないほうがいいと思います。万が一、徘徊したときなど、一緒に捜してくれるようなこともあるでしょう。わが家には週2回、デイサービスの迎えの車が来ていたのと、ご近所さんとバーベキューや餅つき大会をやったときに父は車いすで参加したこともあったので、わざわざ介護をしていると言わなくてもわかってもらえる環境でした」(春さん)

 

さらに、父がデイサービスから帰ってくる時間に、春さんが仕事で不在のとき、近所の人に電話をかけて、代わりにお迎えをお願いしたこともあったほど。その代わり、困ったときはお互いさま。ご近所の人が泊まりがけで外出したときは、留守番をしている親御さんを春さんが見守るなど、ふだんからご近所同士で支え合う関係が成り立っているという。

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