毎年恒例、年末年始の人気企画、麗人・美輪明宏さん(83)による愛のメッセージ。今回のテーマは「新時代を生き抜く知恵」。来年5月の改元で、日本は新時代へと突入する。「昭和」と「平成」という激動の時代を強く生き抜かれた美輪さんが語る、希望の持てる未来とは――。
私は世の中をいつも俯瞰で見ています。
便宜上、「明治」「大正」「昭和」「平成」という言葉を使いますが、“この時代だったからこうなった”と、特別に時代を区切って考えることはしない人間です。
そもそも地球というのは、はるか大昔からずっと変わらず回り続けています。
平成は「災害の時代」という向きもありますが、過去にも大地震や津波、そしてさまざまな天変地異が起きました。
でも、時間はずっと同じように流れていきます。1時間は1時間。1日は1日……。昔も今も変わってない。
平成から新元号になることで、何か大きく変わるみたいに錯覚を起こす方々もいるようですが、そんな時間の流れは変わりません。メディアが話題作りで、そう思わせたいだけ。惑わされないでください(笑)。
元号に限らず、“師走です”、“夏至になりました”という言葉なども、人間が便宜上、勝手に付けただけのこと。
ただ時間が淡々と流れている。その延長線上でさまざまなことが起き、変化を続けている、そう考えればいいのです。
ただ言えることは、人間が生活していく中で、いろんなものが新しく生み出されてきました。
デジタルの時代になり、情報通信の分野でとくにそれが顕著です。目の前で起きたことを、すぐに世界中に発信できる時代。
つい数十年前までは、想像もできなかった進化がさまざまな分野であります。
昭和26年、私が長崎から東京に来たころは、汽車で28時間もかかりました。
しかも当時は、客車の椅子は木。座席はすべて向かい合わせで、もちろん冷暖房なんてありません。夏は窓を開けっぱなし。
だから、目的の駅に着くと、顔を洗うための洗い場が、駅のホームにずらっと並んでいました。まるで学校にある共同の手洗い場のようでした。
乗客たちはそこで顔を洗ってから、おのおの目的地へと向かう。今なら長崎から東京まで飛行機で2時間ちょっと。便利になりました。
そして今では、当たり前のように使われている生活用品が普及し始めたのが、「神武景気」(昭和29年12月~32年6月)あたりからです。
電気洗濯機、電気釜、冷蔵庫、そして電話……。そのころの通信手段は手紙、電報、電話だけ。
まだ電話は、各家庭にあったわけではなく、電話のある家にご近所の人が借りに行くという時代でした。
ご近所さん宛てにかかってきたときには、“○○さん、お電話ですよ!”と呼ばれて、“申し訳ありません。じゃあ、お借りします”と言って、使わせてもらっていたんです(笑)。
「平成」の前には、そんな時代があったのです。こうしてみると、近年は、とくに変化のスピードが年々、早くなっているようです。そんなデジタルな時代だからこそ、「人のつながり」が大事なのです。