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「エンディングノートの“エンディング”というフレーズを聞くと、どうしても死に直結するようなイメージがありますが、それがもし“ありがとう”という思いに変えられたら、どこかぬくもりを感じますよね。この本をきっかけに、家族のコミュニケーションがより深まって、優しく思い合う気持ちが多くの人に広がれば、うれしいと思います」

 

そう語るのは、今年デビュー35周年。数多くの映画やドラマで活躍中の女優・財前直見さん(53)。彼女が初プロデュースした著書『自分で作る ありがとうファイル』(光文社)がいま、同世代の女性たちに話題を呼んでいる。

 

これまでの書き込み式のエンディングノートとは違い、項目ごとのファイルで保存され、変えたいところだけを何度でも簡単に更新できるというファイル式ノート。本書はその書き込み用シートもインターネットで提供している(QRコードを使って特設サイトにアクセス、PDF書類をダウンロードしてプリントアウト)。

 

ここで本誌が注目したいのは、著書にも“サンプル” として掲載されている、一人息子宛てに書かれた「介護について」の直筆シート。これは息子に宛てた、介護に関する自分の希望を書いたものだ。40代、50代にとっては、少し早すぎる“心配”と思われるが、彼女は家族の絆を強めてくれるものだから「すぐにでも作ってほしい」と話す。

 

介護についての項目は、70代の親にも希望を聞いたという。

 

「いきなり親に、将来の介護や病名の告知はどうしてほしい? 延命治療はどうする? なんて聞くと、険悪になる可能性がありますよね。じつは当初、両親にファイルを渡して『これに書いてね』と、お願いしたんです。ところが全然書いてくれませんでした(笑)。それで、まずは自分のことを書いたファイルを作ってから、両親に『こうやってまとめると、一目でわかるし、とても便利なの』と、私のファイルを見せながら説明しました」

 

親に書いてもらいたいと思っても、快く書いてくれるとは限らない。そういう場合は、自分が親にインタビューをして書き留める方法がベストだと、財前さんはアドバイスする。前出の近著にも「親へのインタビュー」という項目がある。

 

《子どものころの夢は?》
《お父さん、お母さんはどんな人だった?》
《好きなこと、嫌いなことは?》

 

といった質問をしながら答えてもらう。そうすると、親も話しやすいし、お互い楽しい。また、この“思い出話”そのものが、親子のコミュニケーションツールになるという。

 

「私自身も今は健康。女優の仕事も続けられているので、正直、まだそこまで『死』を意識していませんでした。でも、50歳で『終活ライフケアプランナー』の資格を取ったときに、実際にエンディングノートを書いてみようとして、挫折したことがあったんです。既存のエンディングノートに目を通してみると、死にまつわる項目が中心。とても書きづらさを感じました。結局、ほとんどが空欄のままで……。きっと両親も戸惑うだろう。だったら“もっと書きやすくて家族のためになるものを”と思ったのが、『ありがとうファイル』を作るキッカケになりました」

 

さっそく、息子に30センチ定規を借りて、ルーズリーフに線を引き、いろいろなテーマのシートを作ることからスタート。自分にとって必要だと思う項目から書き込んで、少しずつ増やしていった。

 

100円ショップで買ってきたクリアファイルフォルダーに、1枚1枚そのシートを入れていって、「ありがとうファイル」の原形ができあがった。

 

書き込みながら、自分の人生を振り返る。そして今後の生活を考える――。オリジナルファイルを作ることは「今後の人生を充実させるための夢のある作業だ」と強く感じるようになったという。

 

「人生はまだまだ長いな~。そうだ、死ぬまでに○○はやっておかないと! 10年後、子どもは◯歳、どれだけ成長しているか楽しみだな~とか(笑)。そう考えながら書いていると、どんどん想像が膨らんできて。寂しいどころか不思議と“今”という時が大切に思えてきたんです。そんな湧き出る夢のためには、もっと頑張らなくっちゃと、プラス思考になっていく自分に気づかされましたね」

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