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介護のために、リフォームが必要だけれど、お金もかかるし、補助金をもらうにも手続きが大変だし――。そんな人にこそ、知ってほしい、もうひとつの選択肢。

 

「車いすを使う母が、家の中を少しでも楽に動けるようにと、’16年に自宅をDIYでリフォームしたんです」

 

そうほほ笑むのは、’80年代に一世を風靡したおニャン子クラブの元メンバーでタレントの新田恵利さん(51)だ。DIYとは、ホームセンターなどで材料をそろえて自分で家具を作ったり、部屋を改造すること。母のひで子さん(90)が、背骨を圧迫骨折し寝たきりになったことをきっかけに、’14年から介護生活が始まった。

 

団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」が目前に迫っている。5人に1人が75歳以上、3人に1人が75歳以上、3人に1人が65歳以上となる超高齢社会が訪れ、住宅で介護をする人が“あたりまえ”の時代に。

 

「介護で大切なのは、本人ができることは本人にやらせてあげることだと考えています。それが、体の健康や機能の維持のためにいちばん必要なんです。母のために、やったリフォームも、すべてそのためのもの。そしてDIYは、費用の節約にもなるし、自分自身の楽しみにもなるんです」

 

タレントの仕事と家事と介護を両立する新田さんに、自分でできる介護リフォームについて聞いた。

 

新田さんは’00年に建てた二世帯住宅暮らし。1階に母と兄が暮らし、2階と3階に新田さん夫婦が暮らす。新田さんと兄が分担で母の介護をしていて、それを新田さんの夫がサポートしている。

 

骨折直後は寝たきりで、要介護4だったひで子さんも、きょうだいの献身的な介護と、リハビリに励んだ本人の努力もあって、要介護3に回復。車いすで動けるように。車いす生活になった母を見て、気づいたことがあったという。

 

「母が急に寝たきりになったとき、居間の和室の畳の上に、じゅうたんを敷いて、そこに介護ベッドを設けたんです」

 

当然、母がベッドに出入りするたび、同じ場所を通ることになる。

 

「畳がだんだんと凹んでいって……。特に方向転換のために回転する場所がひどかった。じゅうたんがたわんで、段差やシワになってしまい、母はスムーズに車いすを動かせなくなっていました。転んだりしてケガをする前に、改善しようと思ったんです」

 

一定の条件を満たせば、介護保険制度を使って、リフォームの補助金を受けることもできることは、もちろん新田さんは知っていた。それでも、自分でやろうと考えた。

 

「行政を通すと申請にも時間がかかります。また、施工業者とのスケジュールの調整なども必要です。でも、DIYなら私たち夫婦のスケジュールが合えばすぐにできる。それで、会社員の主人が仕事を休める週末に、『やっちゃおう』って決めたんです」

 

1つ問題があった。改築する間、母に部屋を空けてもらう必要があったが、ふだん通っている施設には宿泊サービスはなかったのだ。

 

「最初、雑談の中で、母に宿泊のことを伝えているときは平気だと言っていたんですが……。ケアマネジャーさんに教えてもらったショートステイの施設が、1泊はダメで2泊からと聞いた途端、『行きたくない』と泣いて嫌がったんです」

 

新田さんが、背中をさすり、「畳で車いすは動きにくいでしょう」と諭しても、『大丈夫』と強がった。

 

「私のほうが泣きたくなりました」と振り返る新田さんだが、助け船を出したのはご主人だ。

 

「主人が『お母さんがケガをしないようにしたいから2日間がまんしてくれる?』と言うと、主人には気を使う母が『うん』と素直にうなずいてくれました」

 

母は無事に施設に入り、リフォームが始まった。

 

「介護ベッド以外の家具と荷物を隣の部屋へ移動させました。そしてじゅうたんをはがし、車いすが通る部分の畳をはがします。8畳の和室のうち、2畳ぶんの畳をひっくり返して、外の庭に出しました」

 

次にホームセンターへ向かい、断熱材とベニヤ板、タイルカーペットを購入した。タイルカーペットとは、パネル状のカーペットのことで、タイルのように、隙間なく敷き詰めて使用する。

 

「まず、断熱材を隙間ができないように敷き詰めます。その上に、畳の高さと同じ高さになるように、そして硬さを確保するために、ベニヤ板を重ねます。どちらも、1畳サイズのものが売っているので、それを購入しました。最後にタイルカーペットを敷き詰めたら完成です」

 

当初、車いすが通る2畳分だけで終える予定だった。

 

「でも、すぐ終わっちゃって(笑)。母も2泊するし、主人と『いっそ部屋全体をリフォームしよう』ってなりました。こういう行きあたりばったりも、DIYのいいところですね。業者にお願いしたら、そうはいかないでしょうから」

 

介護ベッドを隣室に移動させ、すべての畳を取り去る。そして、ホームセンターへ追加の材料を買いに行った。断熱材やベニヤ板は1畳サイズのものが売っているが、タイルカーペットは50×50センチ四方のものが多く、畳のサイズに合わせてカットしなければいけない。

 

「サイズを測っても、DIYは、その大きさに材料を切れるかどうかが難しい! 大切なのは、心の余裕です(笑)。素人のやることですから。それが家族のケガや事故につながるなら別ですが、多少の隙間やいびつな部分は“まぁ、いいか”の精神で乗り切りましょう」

 

断熱材とベニヤ板は、畳1畳分(91×182センチ)サイズのものがそれぞれ1,000円ほどから、タイルカーペットは、50×50センチのものが、1枚200円ほどから売っている。8畳のリフォームでも、2万5,000円ほどで済んだという。

 

いま、新田さんが熱中しているのは、熱海に購入した古民家をリフォームすること。もちろんDIYで、壁まで自分たちで張り替える本格的なものだ。

 

「いつか、夫と共に住みたいと考えています。でも、まだまだ先になりそうですね」

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