(撮影:木村哲夫) 画像を見る

「ミュージカル、アクション、コメディー」を3本柱に三宅裕司(68)が劇団SETを旗揚げしてから40年。岸谷五朗、寺脇康文といった多くの売れっ子俳優を輩出し、観客動員数もうなぎ上り、名実ともに人気劇団となった。座長・三宅裕司が創立時からの盟友・小倉久寛(64)と語り合った劇団の歴史とは?

 

三宅「28歳で劇団を旗揚げして40年。よく続いたなあというのが率直な感想ですよ」

 

小倉「僕は、64歳までよくやったなあって(笑)」

 

三宅「それはあるよね。俺たちが子どものころの60って、めちゃくちゃ年寄りに見えたもの。今とはえらい違い。俺なんか、あと2年で70だよ!」

 

小倉「でも、三宅さんを見ていると、70もさほど老け込んだ気がしませんよ。しかも、ちゃんと貫禄はある。僕なんか、老けているのに貫禄がないから、うらやましいですよ」

 

三宅「小倉は劇団に入ったころとまったく変わらないよな」

 

小倉「僕はね、そもそも大学を卒業したら普通に会社勤めをするつもりだったんですよ。でも、オイルショックの時代でなかなか就活がうまくいかなくて。そんなとき、中村雅俊さんのドラマで演劇青年が出てきて、それがすごく楽しそうだなあと思ったんですよ」

 

三宅「劇団の活動が楽しそうってことだろう?」

 

小倉「そうそう」

 

三宅「絶対、蜷川(幸雄)さんのところで灰皿投げられるのは嫌だろうね(笑)」

 

小倉「まあ、どうせなら楽しいほうが……(笑)。全然経験もないのにちょっと劇団とかに入ってみようかなあと思ったんです。なかでも喜劇は、騒いでバカやってるだけでいいのかなあって」

 

三宅「俺は大学時代にコミックバンドとコンボジャズバンドと落研をやっていて、卒業したら喜劇役者を目指そうと思っていたんだよ。でも、『日本テレビタレント学院』はつまらなくて辞めて、劇団も2つ、3つ行ったけど、自分のやりたいこととずれていた。それで、自分で劇団を作ろう、と」

 

小倉「当時は小劇場もたくさんあったでしょう。興味のある劇団はなかったんですか?」

 

三宅「行きたいと思ったのは、『東京ヴォードヴィルショー』(※1)くらいかなあ。でも、座長が福島出身なのでやめました。佐藤B作さんには内緒だけど(笑)。東京にこだわりもあったしね」

 

小倉「SETって、できた当初から“ミュージカル、アクション、コメディー”の3本柱でしたよね。アクションを入れたのはなんでですか?」

 

三宅「そのころ劇団のメンバーとキャラクターショーのバイトでアクションをやっていたからだよ(笑)」

 

小倉「それだけ?(笑)」

 

三宅「芸の一つとして取り入れたら、劇団の作品にも広がりが出るだろうと思って」

 

小倉「口コミで徐々にお客さんは見にきてくれるようになったけど、やっぱり、三宅さんの『ヤンパラ』(※2)が大きかったですよ。お客さんが一気に増えて」

 

三宅「劇団の活動だけじゃ食っていけないからね。それに、口では『劇団を売るために』と言いながら、本当は自分も売れたかったのよ(笑)」

 

小倉「岸谷五朗と寺脇康文が入ってきたのもそのころです」

 

三宅「俺の仕事がどんどん忙しくなって体力的にも無理だなっていうころ。だから、岸谷と寺脇を前面に出してスターにしていこう、と」

 

小倉「そのとおりになりましたよね。2人が辞めるまで10年くらいあったのかなあ」

 

三宅「自分たちで劇団を作りたいって言われて。でも、昔、俺も同じだったのよ。やりたいことがあったら、自分で作ったほうがいいと思ってSETを始めたから。それで、2人が抜けた後、そこからまた小倉と俺のコンビネーションを研究するようになった」

 

小倉「僕は、ずっとマスメディアの仕事が苦手でした。団員になって1年目くらいかなあ、企業の社員教育ビデオをやったときに苦い経験をしたんですよ(笑)」

 

三宅「覚えてるよ。電話の交換手の役だろう(笑)」

 

小倉「5行のセリフが言えないもんだから何度もダメ出しされて。結局、役を降ろされたんですけど、その代わりをやるのが僕のマネージャーだったんですよ(笑)」

 

三宅「ショックだよな、役者にとって」

 

小倉「その人、よく結婚式の司会のアルバイトをやっていたんですよ(笑)」

 

三宅「今では、プロの司会者だもんな(笑)」

 

小倉「ショックで、翌日、三宅さんのところに『もうマスコミの仕事はやめます』って言いに行きましたね(笑)」

 

三宅「『舞台だけにします!』って(笑)」

 

※1:劇団東京ヴォードヴィルショー。’73年に佐藤B作を中心に結成された人気劇団。
※2:ラジオ番組『三宅裕司のヤングパラダイス』(ニッポン放送・’84〜’90年)。『ドカンクイズ』『恐怖のヤッちゃん』など数多くの人気コーナーが生まれ、中高生を中心に絶大な人気を誇った。

 

57作目となる劇団SET創立40周年記念公演・舞台『ピースフルタウンへようこそ』。東京公演:10月11〜27日、池袋サンシャイン劇場/愛知公演:11月8〜9日、穂の国とよはし芸術劇場PLAT/兵庫公演:11月13〜14日、兵庫県立芸術文化センター。

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