2018年7月に事実婚を発表し、2019年9月に長男が誕生した、はあちゅうとしみけん。活躍する業界もファン層も違う異色夫婦が、「これ、どうする?」「あれ、どう思ってる?」と赤裸々に語り合う本誌連載「家族会議 議事録」の第24回。SNSの炎上から、男女の性差による不公平を考えます。
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はあちゅう「けんちゃんが言ったりやったりしても何も言われないのに、同じことを私がやると、突っ込みを受けるケースが、けっこうあるんだよ」
しみけん「たとえば?」
はあちゅう「けんちゃんは、インスタグラムに外食ご飯の写真をアップしてても何も言われないけど、私がアップすると『お子さんは、どうしてるんですか』って必ずコメントがつく。『裁縫ができない』って書いたときは、『ボタンくらいつけられなきゃ主婦じゃない』『学んだほうがいい、恥ずかしいことですよ』って言われた。もし、けんちゃんがそれ書いても、絶対そんなこと言われないはず。なぜなら、『男は裁縫をしない』という社会的な前提があるから。そのあたり、性差による不公平を感じるなあ」
しみけん「他人に興味があるんだねぇ、コメントする人たち。僕は、『匿名や直接会って言われてない意見は、聞く耳持たなくていいじゃん』と思っちゃうけど」
はあちゅう「私は、女性のフォロワーさんが多いから、同性としてフォロワーさんが私を見る目が厳しい面もあるのかも。要は、『いい奥さん』『よい母』みたいな、イメージの押しつけを感じるんだよ。子育てや教育方針に関しても、『女性が全責任を負わなきゃいけない』みたいになってるように感じる」
しみけん「なるほど」
はあちゅう「たとえば、私が『うちは母乳です』とか、『粉ミルクです』って言ったら、どっちにしろ炎上するだろうけど、けんちゃんが言っても燃えないと思う。だって、父親にはそこまで当事者性がないから。そういうのは、母親が決めるものだと思われてる。母乳が出なかったら母親のせい、母体を健康に保っていない母親の責任。そういう見方をする人は多い。家事全般に関しても『なんで女なのに、できないの?』って、重圧を常に感じるよ」
しみけん「そういうことを言う女の人たちって、自分が課せられてきたものを押しつけたいんじゃないの? 『自分は我慢してたのに、なんで、はあちゅうは!』って。
はあちゅう「それはあるね。ベビーシッターの件でも言われた。『私はベビーシッターを使えなかった』『はあちゅうさんは、外出ができてうらやましいです』『すごく恵まれている環境なんですね』って」
しみけん「結局、うらやましいんだよ。自分ができなかった悔しさを、はあちゅうでストレス発散してるだけでしょ」
はあちゅう「自分と同じ苦しみを味あわせたいんだよね。あとさ、ウーバーイーツで頼んだものをSNSでシェアすると、『ご飯作らないんですか?』『自炊しないんですか?』『たまには家で野菜を食べろ』って言われるけど、そこにも『女は自炊しろ』という圧を感じる」
しみけん「はあちゅうが男だったら、言われてないな、それ(笑)」
はあちゅう「そう。私じゃなくても、女性だったら言われるんだよ。有名な男性グルメブロガーさんは、奥さんもお子さんもいて、地方出張が多くて、家になかなか帰れないそうだけど、そのことについては何も言われないでしょ。もし結婚して子供がいる女性だったら、絶対言われるよ。『家で子供はどうしてるんですか?』『毎日外食みたいですけど、家でご飯作ってますか?』って」
しみけん「『性別の役割』という部分だけで言われちゃうんだ」
はあちゅう「つまり、ジェンダー(社会的に形成された性差)だね。旦那がいるのに家を空けること自体が、『悪』だと思う人がいる。基本、家にいて、子育てと家事をしているのが、『いい奥さん』って思ってる人が、いまだにものすごく多い。そこから外れたことをすると、一気に炎上する」
しみけん「炎上に加担するような人は、どんな社会でも必ず一定数いるものだから、『そんなの言わせとけば』って思っちゃうけど。ただ僕の場合、男だから言われにくいという以上に、キャラが言いにくい雰囲気を出してるのかもね。あと、僕はリアクションも一切しないし。完全無視するからね」
はあちゅう「たぶん、世の中の人たちにとってAV男優って、自分たちの世界の『圏外』の存在なんだよ」
しみけん「それに、世間がAV男優という職業を下に見てるのはある。炎上に加担するような人たちですら、僕を下に見てる(笑)。だからそんなに言ってこない」
はあちゅう「『自分と同じくらいの能力なのに、なんでこいつのほうが幸せそうなんだ?』という “やっかみ” を感じさせる対象が、炎上するんだよね。かつ、言われて気にしそうな人がターゲットになる」
しみけん「まさに、いじめられっ子と同じだ。いじめられた時のリアクションがおもしろいから、またいじめられる。いじめられた子が、急に殴り返して胸ぐらつかんできたら、二度といじめないでしょ」
はあちゅう「私は、自分の子育てのことについて何か言われれば気にしちゃうし、イラッとする。けなされれば、反発心も生まれる。たぶん『女の子は世間からこう思われている、こうであるべき』みたいなものが、私自身にインストールされちゃってるからだよ」
しみけん「刷り込まれたジェンダーか」
はあちゅう「逆にジェンダーに関係ないことは、まったく気にならない。『安倍政権の陰謀論がどうのこうの』みたいなコメントとかね。意味不明なだけで。『へんな人、来たなあ』って思うだけ」
しみけん「はあちゅう、何度か『桜を見る会』に呼ばれていたもんね」
はあちゅう「いま言うと炎上するやつよ、それ」
【はあちゅう】
1986年、神奈川県生まれ 慶應大学在学中より、ブロガー活動を開始。会社員経験を経て、2014年、フリーに。1月16日に新著『とらわれずに生きるための幸福論 じゃない、幸せ。』(秀和システム)を発売
【しみけん】
1979年、千葉県生まれ 1998年にAVデビューし、出演本数は約1万本の現役AV男優。最新刊に『しみけん式「超」SEXメソッド』(笠倉出版社)がある
取材&構成・稲田豊史
(週刊FLASH 2020年2月18日号)