「隕石が接近して地球滅亡まであと半年、というドラマのお話をいただいたのが昨年の秋でした。そのときは“非現実感”がおもしろそう、と思ったんですが、今、世界中がかつてない混沌とした状況に陥ってしまって。もちろん設定は違うけれど、時代が、地球が変わるときだと痛感しています」
そう話すのは、ドラマ『隕石家族』(東海テレビ・フジテレビ系、土曜23時40分〜)で主演を務める羽田美智子さん(51)。彼女が演じる主婦・門倉久美子は、あと半年の命と知り、自分に正直に生きたいと一念発起。「好きな人がいます!」と家族に告白し、高校時代の初恋の人のもとへと走ってしまう。
「人生でやり残したことはないか? と考えたとき、久美子にとっては、かつての純愛を手に入れることだったんですよね。その気持ちをまったく理解できないわけではないし、むしろ、純粋に人を愛した記憶を大事にする部分には共感できて、『正直に生きるってどういうことだろう?』と、自身に問い直す機会にもなりました」
久美子の暴走をきっかけに、平凡な一家の生活は一変する。本来の自分を取り戻して生きることは、周囲の人間を不幸にするのか。
「自分を大切にすることと、勝手に生きることは、また別物だと思います。ただ、あらためて感じたのは、世の中は既成概念やルールで覆いつくされているかもしれないということ。本来はもっと自由に生きていいはずだよな、って」
くしくも、新型コロナウイルスの影響で世間の価値観が大きく変化している今、生き方や働き方が見直され始めている。
「秩序や常識は、よほどショックなことが起こらない限り、なかなか変わらないでしょうから。とはいえ、このニュースが出てしばらくは、病いや死への恐怖でいっぱいでした。ウイルスに感染する恐怖、十分な医療を受けられずに命を落とす恐怖、あるいは職を失って収入が得られなくなる恐怖……不安に押しつぶされそうで、軸がブレて、フラフラでした」
それでも、「地球が滅亡するとして、自分にとって本当に必要なものは?」と自身に問い続けた。
「すると思いのほか、きっとたいしたものじゃないな、って思えたんです。あの世に持っていける財産は、お金や評価ではないだろうし。人を純粋に愛して、愛されてよかった、という記憶くらい。そして、自分がどれだけ伝えられたか、ってことなんじゃないかな。結局は“あきらめる”ということ。ネガティブな言葉に聞こえますが、もともとは仏教用語で“明らかに眺めて物事に執着しない”という意味のようです。近年の自然災害を経験するたびに実感してきたこともあるんですが、極論『命さえあれば、なんとでもなる』、あらためて覚悟を決めたら、強くなれた気がします」
「女性自身」2020年5月5日号 掲載