(撮影:前 康輔) 画像を見る

「AKIRAーー。父の名前をタイトルにするかは、正直かなり迷ったんです。でも母に連絡したら、『それはよかね。父ちゃんも喜ぶばい』と、喜んでくれました」

 

そう話すのは、12月8日に音楽デビュー30周年記念アルバム『AKIRA』をリリースする福山雅治(51)。6年8カ月ぶりとなるオリジナルアルバムは、自身が17歳のときに経験した父の死と改めて向き合い、誕生した渾身の1作だ。

 

「口では『いつ死んでもいい』なんて言いながらも、最期を迎えるときは無念な思いを抱えるものなのだと、苦しい闘病の果てに逝った父を見ながら悟りました。17歳にして、ある種の死生観が決定づけられた瞬間でした」

 

生前の父はどんな人だったのかと尋ねてみると、「麻雀が好きで酒飲み。愛すべき昭和の男だった」と笑う。

 

「軽口をたたいたり、何でもすぐに冗談めかしたり。僕のお調子者なところは、父親に似たのだと思います。あとは猫背かなあ。昔、僕が初めてテレビドラマに出演したとき、母から連絡がきたんです。祝福してくれるのかと思いきや、『猫背はやめたほうがよか。父ちゃんにそっくり』と、ダメ出しの電話だったんです。腹が立ってすぐに電話を切りましたね(笑)」

 

そして、父が遺したある言葉が、いまの自分を作ってくれたのだという。

 

「子どものとき、『根性だけはある』と父に褒められたことがとてもうれしかったんです。ギター1本だけ持って単身上京した18歳の僕が、たいした才能もないのにデビューできたのも、今日までなんとか続けてこられたのも、人生でたった一度、父に褒められた言葉が僕をずっと支えてくれたからだと思います」

 

前向きに逆境をも乗り越えていくという精神はいまも健在。新型コロナウイルスの影響で今年予定されていた故郷・長崎県稲佐山での野外ライブや全国ツアーはすべて来年に延期となってしまったが、12月27日には福山にとって初となるオンラインライブが配信される。

 

「どんな状況でも何かしら手立てはある。体が元気だったら何でもできると思っています。オンラインライブは初の試みですが、画面の向こう側にいるオーディエンス1人ひとりが参加できて、かつ興奮できるステージを目指します!」

 

「女性自身」2020年12月15日号 掲載

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