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「私が主人を好きになったのは、描く作品もそうですが、純粋で無邪気な人柄です。今でも元気なときは、おいしそうにお菓子を食べたり、楽しそうに散歩したりしている。そんな姿を見ると、本当にかわいいな思うことがあります。でもこの状態が続けば、いつか主人のことが嫌いになってしまうかもしれない……」

 

そう語るのは、漫画家でタレントの蛭子能収さん(72)の19歳年下の妻、マルちゃん(53・仮名)。今年7月、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表しているが、その間ずっと蛭子さんに寄り添ってきたマルちゃんは介護に疲れ、精神的に限界を迎えたことも。そこで、今後は「訪問介護」「デイサービス」「ショートステイ」などの介護サービスを利用しようかとも考えているマルちゃんの悩みを、認知症介護の先輩に相談することにした。

 

【お悩み1】本人が認知症であることを認識していないことがストレスになります。そんなときはどうしたらいい?

 

「認知症の初期では、自分の状態を否認し、それがいらだちや怒りとなって周囲にぶつけることも。不安で心の葛藤がピークになっています。否定したり、大丈夫だと過度に安心させたりしないこと。認知症と認めない場合も『そうだったらいいわね』と温かく見守り、折を見て『気になるのならこんな治療もあるわよ』と医療機関や公的サービスに誘ってみたらどうでしょう」(「公益社団法人 認知症の人と家族の会」副代表理事・花俣ふみ代さん)

 

【お悩み2】夜5、6回、多いときは10回以上トイレに立ち、満足に寝られません。

 

「認知症にはさまざまな症状がありますが、ほかに原因があることも。夜間頻尿も加齢による前立腺肥大症から起こる症状かもしれませんね。泌尿器科で薬を処方されて改善したケースも。症状の原因をさぐって、対処できるものはすぐに改善したい。とにかく介護者が夜しっかり睡眠をとることが重要。介護保険サービスの利用も検討してみたらどうでしょうか」(花俣さん)

 

【お悩み3】お風呂ではシャンプーを4、5回繰り返すことがあり、目が離せません。

 

「洗髪しない悩みは多いのですが、シャンプーをしすぎるということもあるんですね。いずれにしろ入浴のたびに付き添うのは大変。デイサービスや訪問介護のサービスをぜひ利用してください。また、容器に『シャンプー』『ボディソープ』と大きな字で書いておき、ほかのものは浴室に置かないようにして、入浴の手順を『(1)シャンプー、(2)体を洗う』と浴室に貼っておくのも手」(花俣さん)

 

(撮影:加瀬健太郎/取材:山内太)

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