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「今の状況は戦時下とよく似ています」……夏に行ったインタビューでも、そう語っていた美輪明宏さん(85)。第3波が猛威を振るい、相変わらず収束が見えないコロナ禍のなか迎える新年を、私たちはどう生きればいいのだろう? 美輪さんからの新しい1年に歩み出す希望の提言ーー。

 

’20年は、世界中が新型コロナウイルスに翻弄され続ける1年となりました。

 

ここにきて国内では東京、大阪、北海道、兵庫など各地で、一日での新規感染者数が過去最多を記録するなど、第3波の猛威は、すでに第1波、第2波を超える危険な状態だと感じております。

 

政府は第3波の感染拡大を受け、「Go To トラベル」や「Go To イート」などの一部停止に踏み切りましたが、相変わらず決断を下してから実行に移すまでのスピード感はないですね。

 

観光業界や飲食業界は、自民党の大事な票田です。そういう業界から嘆願書が来ると、嫌でも次の選挙に関わってくるので、菅首相も簡単に中止するわけにはいかない。規制するにしても、緩くしかできなかったのでしょう。

 

ただ、政府を責めてばかりもいられません。

 

大手航空会社が、グループ全体の社員を3,500人も削減するという報道もありました。コロナの影響で、仕事を失った方々が多くいらっしゃることも事実です。

 

そして、さまざまな業界で給与削減、ボーナス、退職金が払えないといった話なども耳にします。

 

ボーナスや退職金が出る会社は、まだいいほうかもしれません。

 

東京、神奈川、大阪など感染者数が多い地域では、お酒を提供する飲食店に対して、再び時短営業の要請が出されました。

 

店舗を借りて飲食店を経営するオーナーたちには、家賃、従業員の給与、光熱費などの支払いが重くのしかかっています。

 

貯金がいっぱいあれば別ですが、毎月カツカツで商売をやっているお店だと、いくら国や自治体からの給付金や協力金をもらっても、それだけでは食べていけない。

 

第1波以降、閉店に追い込まれたお店も少なくありません。国民はそういう飲食店の苦しい経営事情をよく理解していると思います。

 

お店側もお客さんに安心して来てもらうために、衛生面での気配りをはじめ、入店の際は検温、手の消毒、そして人数や座席の制限を設けるなど、クラスターが起きないように、皆さん我慢と努力を続けながら、必死に経営をなさっています。

 

私たちのエンタテインメント業界も、大打撃を受けています。

 

コンサートやお芝居などは、すべてキャンセル。観客数を大幅に減らして、やっているところもありますが、結果的には赤字になってしまう。だから、赤字になるぐらいなら、いっそのことやらないほうがいい、と。

 

そしてプロダクションのタレントやアーティストたちも仕事がなくなって困っています。

 

死活問題ですが、まだ今の段階では、ブレーキとアクセルをうまく使いながら、感染者をできるだけ増やさないように、経済を動かしていくしか方法はありません。

 

経済が回らなくなってしまったら、各家庭が食べていけなくなる。そうなれば、国全体が食べていけなくなってしまいますから。

 

「女性自身」2021年1月5日・12日合併号 掲載

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