ある世代には一流の演歌歌手。ある世代にはネットでおなじみの超絶、歌がうまいおばさま。幅広すぎる活躍をする小林幸子さんを支えるのは結婚10年になる夫でしたーー。
「何でも面白がりつつ、本気で取り組むのが仕事のモットー。でも、プロレスをやったときはネットニュースに『小林幸子、断る勇気も必要だ』って書かれました(笑)」
そう話すのは今年5月、自身初となるオンラインライブを開催し、これまでにもヘビメタ、ロックバンドとのコラボなど新たなジャンルに挑み続けている小林幸子さん(67)。プライベートでは’11年に、8歳年下で、再生医療会社社長の林明男さん(60)と結婚した。
しかし2人の結婚は当初、順風満帆とはいかなかった。
小林さんの個人事務所の社長の解任報道をきっかけに、壮絶なバッシングにさらされたのだ。多くの関係者が小林さんのもとを離れ、芸能界で孤立。リリース予定だったCDの発売も延期された。
「歌手なのにCDが出せないなんて、死亡宣告のようなもの。作曲を頼んでも断られる、スタジオさえ使えないこともありました」
しかし、こうした出来事がむしろ分岐点となる。『ネット』という新しい世界に出合ったのだ。
「ネットの動画サイト『ニコニコ動画』の仕事の話が来たときは正直、躊躇がありました」
そんなときに、日ごろから明男さんが話していたという、「思い込みを捨て、思いつきを拾う」という言葉が背中を押した。
「“自分の年齢がいくつだとか、芸能界を何年やってきたとか、人もそう思っていると思ったら大間違いだ”と夫は言うんです。それはそうだなと。それ以来、自分はこうだという囲いに自分を閉じ込めるのはやめようと思えました」 そこからは、挑戦の連続だった。
「『それ何? 面白いの?』とスタッフに聞いて、スタッフが『面白いです!』と言ったらその意見を信じて、とにかく挑戦しました。すると、その仕事が世間的には“新しい”ことで、注目を集めるきっかけになっていったんです」
そしてバーチャルアイドル・初音ミクの代表曲『千本桜』をカバー。4年ぶりに紅白に返り咲いた。
(取材・文:インタビューマン山下/衣装:ABISTE)